安心できたとき、子どもは自分から動き出します
(前編)
お母さんへ。
子どもがなかなか動けない時、
「どうしたらやる気が出るのだろう。」
「もっと頑張らせた方がいいのかな。」
そんなふうに悩むことがありますよね。
もちろん、
お子様が心配だからです。
少しでも前に進んでほしい。
困らないようにしてあげたい。
そのお気持ちがあるからこそ、
つい、
急がせたくなることも
あると思います。
けれど私は、
長く子どもたちと関わる中で、
少し違う姿を
何度も見てきました。
不安が強い子や、
緊張しやすい子の場合、
急かされることで、
かえって
動けなくなってしまう
ことがあります。
頭の中で、
「ちゃんとしなきゃ。」
「失敗したらダメだ。」
「間違えたらどうしよう。」
そんな思いが重なると、
最初の一歩が、
どんどん重たくなってしまうのです。
だから私は、
「できたかどうか」
だけではなく、
「少し動けたか」を
見ることを大切にしています。
教材を開けた。
自分から席に座れた。
少し声が出た。
一問だけ考えられた。
自分から鉛筆を持った。
そんな小さな動きです。
大人から見ると、
「それだけ?」と
思うようなこと
かもしれません。
でも、その子にとっては、
それまで動かなかった心が、
ほんの少し動いた瞬間
なのかもしれません。
だから私は、
その小さな動きを
急いで次につなげよう
とはしません。
もう一問。
もう少し。
せっかくだからここまで。
そうやって先へ進めるより、
「今日はここまで動けた。」
そのことを
大切にしたいと思っています。
安心できる空気の中で、
子どもたちは少しずつ、
自分の力で
次の一歩を
選べるようになることがあります。
だから、
焦らなくて大丈夫です。
今はまだ、
「やる気がない」
のではなく、
自分から動くための安心を、
少しずつ確かめている
途中なのかもしれません。
後編では、
その小さな「動けた」が
どのように次の一歩へ
つながっていくのかをお話しします。
小さな「動けた」が、子どもの未来につながっていきます
(後編)
お母さんへ。
前編では、
子どもの「できた」だけではなく、
「少し動けた」という
小さな変化を見ることについて
お話ししました。
子どもたちは、
安心できる場所の中で、
少しずつ、
自分から
動き始めることがあります。
最初は、
本当に小さな変化です。
自分から席についた。
教材を開いた。
少しだけ質問した。
自分から何かを書いてみた。
帰り際に、
「また来る。」
と小さな声で言った。
そんな一つ一つの動きです。
でも私は、
その小さな「動けた」を、
とても大切にしています。
不安が強い子ほど、
「失敗したらどうしよう。」
「うまくできなかったらどうしよう。」
そんな気持ちを
抱えていることがあります。
だから、
急かされると、
最初の一歩が
重くなってしまうことがあります。
でも、
急がされない。
失敗しても責められない。
少し待ってもらえる。
そんな空気の中では、
子どもの中から少しずつ、
「やってみようかな。」
という気持ちが
出てくることがあります。
そして、
昨日は座るだけだった子が、
今日は
教材を開く。
昨日は聞いているだけだった子が、
今日は
一言質問する。
そんなふうに、
小さな一歩の次に、
また小さな一歩が
生まれることがあります。
もちろん、
いつも前へ進むわけ
ではありません。
立ち止まる日もあります。
何もしないで終わる日もあります。
でも、それでいいのだと
私は思っています。
大切なのは、
いつも前進することではなく、
安心して、
また戻ってこられること。
そして、
自分からもう一度、
「やってみようかな。」
と思えることです。
だから、
焦らなくて大丈夫です。
小さな動きで大丈夫です。
安心して失敗できる場所で、
子どもたちは少しずつ、
自分のペースで
歩き始めることがあります。
今日できた、
ほんの小さな一歩。
その一歩を
大切に受け止めながら、
また次に動き出す時を、
静かに待つ。
私はこれからも、
そんな一人ひとりの歩みに、
ゆっくり寄り添っていきたい
と思っています。
福田秀一