音読は、読む練習だけではありません
(前編)
お母さんへ。
音読というと、
「国語の宿題。」
「読む練習。」
「上手に読めるようになるため。」
そんなイメージを持たれる方が
多いと思います。
もちろん、それも
大切な役割です。
けれど私は、長く
子どもたちと関わる中で、
音読にはもう一つ
大切な意味があると
感じるようになりました。
最初は、とても小さな声。
途中で止まる。
少しつかえる。
読んでいる途中で
黙ってしまう。
そんな子どもたちにも、
たくさん出会ってきました。
私は、そのような場面で、
「上手に読めるか。」
よりも、
「安心して声を出せているか。」
を大切にしています。
不安が強い子ほど、
心も体も緊張し、
呼吸が浅くなっている
ことがあります。
すると、
言葉を声にすること自体が
難しくなることもあります。
だから私は、
急かしません。
一緒にゆっくり読みます。
途中で止まっても
待ちます。
少しでも声が出たら、
その一歩を大切にします。
時には、
最初の一文字を読むまでに、
長い時間がかかる子もいます。
それでも私は、
その時間を
急がせません。
その子なりに心を整え、
「読んでみよう。」という
気持ちになるまで待ちます。
無理に読ませるのではなく、
自分から
声を出せたという経験が、
次の一歩に
つながっていくからです。
そんな時間を積み重ねていくと、
少しずつ呼吸が落ち着き、
表情もやわらいでいきます。
音読は、
ただ上手に読むため
だけの練習ではありません。
安心して声を出す。
誰かと一緒に言葉を読む。
その時間そのものが、
子どもの心に少しずつ
安心を育てていきます。
だから焦らなくて大丈夫です。
最初は小さな声でもいい。
途中で止まってもいい。
安心できる空気の中で、
子どもたちは少しずつ、
自分らしい歩幅を
取り戻していきます。
後編では、
音読を続ける中で
見えてくる、
小さな変化について
お話ししたいと思います。
声が変わると、子どもの表情も変わっていきます
(後編)
お母さんへ。
前編では、
音読は読む練習
だけではなく、
安心して声を出す時間
でもあることをお話ししました。
音読を続けていると、
ある日、
「あれ?」と思うような
小さな変化が
見えることがあります。
最初はほとんど
声が出なかった子が、
少しだけ
大きな声で読めるようになる。
途中で止まっていた子が、
最後まで
読み切れるようになる。
ほんの小さな変化です。
けれど私は、
その小さな変化こそ、
子どもが安心を
積み重ねてきた
証だと感じています。
不安が強い子は、
いつも心のどこかに
緊張を抱えています。
だから、
声を出すことだけでも、
大きなエネルギーが
必要なことがあります。
けれど、
安心できる場所で、
急かされることなく、
少しずつ声を出していくうちに、
呼吸が整い、
言葉の流れも
自然になっていきます。
すると、
音読だけではなく、
表情が少し明るくなる。
会話が増える。
自分から教材を開く。
そんな変化に
つながることもあります。
もちろん、音読だけで
すべてが変わる
わけではありません。
けれど、
「安心して声を出せた。」
という経験は、
子どもの心に
静かに積み重なっていきます。
お母さんが隣で
穏やかに聞いている。
間違えても
責められない。
そんな安心の中で、
子どもは少しずつ、
「声を出しても大丈夫。」
「自分でやってみよう。」
と思えるようになります。
その小さな積み重ねは、
やがて、
「読めた。」
「できた。」
という喜びにつながります。
その喜びが、
次の一歩を踏み出す力を、
静かに育ててくれるのです。
そして、その変化は、
お母さんにとっても、
「この子は大丈夫。」
と思える
安心へと変わっていきます。
だから、最初から
上手に読めなくても
大丈夫です。
小さな声でも。
少しつかえても。
その一歩一歩は、
やがて子どもが
安心して前へ進む
力につながっていきます。
私はこれからも、
その小さな歩みを
大切に見守りながら、
一人ひとりと
音読を
続けていきたいと
思っています。