「先生、将来やっていけるんでしょうか…」
大学生になった生徒から、
こうした言葉を聞くことがあります。
一見すると、
勉強の悩みのように見えるのですが、
よく話を聞いてみると、
実は少し違うのです。
本当の悩みは、
「勉強が難しい」ということ
ではありません。
その奥にあるのは、
「社会に出て、自分はやっていけるのだろうか」
という不安です。
大学生になると、
アルバイトを経験したり、
社会の仕組みを少しずつ
知るようになります。
先輩の話を聞いたり、
働いている大人の姿を見る中で、
それまで遠くにあった「社会」が、
少しずつ現実味を帯びてくるのです。
自分もいずれ、
この世界の中で生きていくのだという実感が、
静かに心の中に広がっていきます。
すると、それまで見えていなかった
「現実」が見えてきます。
社会で働くとはどういうことなのか。
自分はどんな仕事ができるのか。
本当に生活していけるのか。
人とうまく関わっていけるのか。
自分の居場所は見つかるのか。
自分らしく生きていくことはできるのか。
場合によっては、
思っていたよりも厳しい現実に、
戸惑いを感じることもあります。
そして、こうした問いが、
ある日ふと、
心の中に現れてきます。
その結果、
「勉強がつらい」
「進路が分からない」
といった形で、
悩みが表に出てくることがあります。
これまで順調に進んできた子ほど、
この変化に驚くことも少なくありません。
それは、
今まで感じたことのない種類の不安だからです。
でも私は、
こうした悩みを聞くたびに思うのです。
「この子は、
本気で人生を考え始めている」
まだ答えは出ていなくても、
その問いを持ったこと自体に、
大きな意味があると感じるのです。
そう感じるのです。
大学生が抱える
「社会でやっていけるのか」という不安。
実はこれは、
とても自然な感情です。
むしろ、
真面目に人生を考えている若者ほど、
この悩みにぶつかります。
学校では、
どの大学に進むか。
どの資格を取るか。
こうしたことは教えてくれます。
しかし、
「社会でどう生きていくのか」
ということは、
あまり教えてくれません。
どのように働き、
どのように人と関わり、
どのように自分の居場所を作っていくのか。
失敗したときにどう立ち上がるのか。
迷ったときに、何を基準に選ぶのか。
こうした本質的な問いは、
実際に社会に触れたときに、
初めて立ち上がってくるものです。
だからこそ多くの若者が、
大学生になって初めて、
この問いに出会うのです。
そしてその問いは、
すぐに答えが出るものではありません。
だからこそ不安になり、
立ち止まってしまうこともあるのです。
先日、ある大学生と
ゆっくり話す時間がありました。
アルバイトの経験を通して、
社会の現実をとても
真剣に見ている様子でした。
そして最後に、
彼はこう言いました。
「社会の中でどう生きていくのか、
もう少し考えてみたいです」
その言葉を聞いたとき、
私はとても嬉しくなりました。
なぜならそれは、
「自分の人生を考え始めた」
という大きな成長のサインだからです。
若い人が人生に悩むとき、
その心の奥では、
「本当に自分らしく生きたい」
という願いが、
静かに動き始めています。
まだ形にはなっていなくても、
その想いこそが、
これからの人生をつくっていく力になります。
だからこそ私は思います。
この悩みの中にこそ、
その子の未来が、
静かに芽を出しているのだと。
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代表 福田秀一