さっきできたのに、もう一度止まる――そんなことがあります
(前編)
お母さんへ。
算数を一緒にやっていると、
不思議に感じることがあります。
さっきできた計算なのに、
もう一度出てくると
手が止まってしまう。
昨日できていたのに、
今日は、
「これ、どうするの?」
と聞いてくる。
そんな姿を見ると、
「ちゃんと分かっていないのかな。」
「覚えるのが苦手なのかな。」
と心配になることも
あると思います。
同じような問題でも、
すっとできる時もあれば、
なぜか止まる時もあります。
見ているお母さんも、
「どうしてだろう?」
と戸惑ってしまいます。
でも、
子どもたちを見ていると、
解き方を覚えていることと、
数字が頭の中で
つながっていることとは、
少し違うように
感じることがあります。
たとえば、
「7+8」。
答えの「15」を
覚えることもできます。
でも、7を見て、
「あと3で10。」
8を、
「3と5」に分ける。
7に3を足して10。
残った5を足して15。
そんな数字の動きが
頭の中でつながってくると、
答えを思い出すだけではなく、
自分で答えまで
たどっていけるようになります。
ところが、
この途中のどこかが
まだつながっていなければ、
「7+8」を見たところで、
手が止まることがあります。
これは、
「考える力がない。」
ということでは
ありません。
どこから動かせばいいのかが、
まだ見つかっていないだけ
かもしれません。
ですから
止まった時に、
すぐ答えを教えるより、
私は、
聞いてみることがあります。
「7に、あといくつで10?」
すると、
「3。」と返ってくる。
「じゃあ、8から3をもらったら?」
少し考えて、
また数字が動き始める。
その瞬間、
止まっていた計算に
道が一本できたように
見えることがあります。
一度止まっても、
そこまで考えてきたものが
なくなったわけではありません。
途中までできているところを
見つけると、
そこから先へ
進めることがあります。
算数が苦手なのではなく、
数字と数字の間に、
まだ道ができていない。
そう考えてみると、
止まっている姿も、
少し違って見えてきます。
数字が頭の中で動き始めると、計算の表情も変わってきます
(後編)
お母さんへ。
計算で手が止まった時、
私は、
たくさんの問題を
続けて解かせるより、
一つの数字を使って、
短いやり取りをすることがあります。
たとえば、
「8に、あといくつで10?」
↓
「2。」
「6に、あといくつ?」
↓
「4。」
「9なら?」
↓
「1。」
最初は少し考えていた子が、
何度か繰り返しているうちに、
「2。」
「4。」
「1。」と、
すっと答えるようになる。
そこで終わっても構いません。
大切なのは、
何十問も解いたことではなく、
数字を見た時に、
次の数字が心に
浮かんだことです。
また、
頭の中だけでは難しければ、
指を使ってもいい。
紙に書いてもいい。
丸を描いてもいい。
10になる組み合わせを
何度も見てもいい。
その子が、
「分かる形」にしてから
考えればいいのです。
そして少し慣れてきたら、
今度は、
頭の中でやってみる。
「8。」と聞いた時に、
↓
「あと2。」が浮かぶ。
「7。」なら、
↓
「あと3。」が浮かぶ。
そうやって、
数字同士が少しずつ
結びついていきます。
私は、
計算の速さだけを急いで
求めなくてもいいと考えています。
最初は、
ゆっくりでもいい。
途中で指を使ってもいい。
何度同じことを
確かめてもいい。
昨日より少し、
数字が浮かぶのが早くなった。
昨日より少し、
自分で答えまで行けた。
その小さな変化を
積み重ねていく。
するとある時、
こちらが聞くより先に、
「分かった。」と
鉛筆が動き始めることがあります。
その時に育っているのは、
答えを覚える力
だけではありません。
「分からなくても、
自分でたどっていける。」
という感覚です。
計算で止まっている子を見た時、
「もっと練習しないと。」
と考える前に、
「どこまでなら、つながっているかな。」
と考えてみる。
そこから始めると、
その子に必要な
次の一歩が、とても
見つけやすくなることがあります。