「やりなさい」が増えるほど、動けなくなることがあります
(前編)
お母さんへ。
「やりなさいと言わないと、
本当に何もしないんです。」
「放っておいたら、
ずっとそのままで……。」
そんなお話を
聞かせていただくことがあります。
だから、
「宿題したの?」
「いつやるの?」
「あとでじゃなくて、
今やったら?」
と声をかける。
ところが、
「あとでやる。」
「分かってる。」
と返ってくる。
しばらくして見てみると、
まだ始めていない。
すると、もう一度、
「いつになったらやるの?」
と言いたくなる。
お母さんが、
子どもを困らせたいわけでは
ありません。
むしろ、
明日困らないように。
勉強についていけるように。
少しでもできるように。
そう思うからこそ、
声をかけているのだと思います。
でも、
このやり取りが
毎日のように続くと、
子どもの中で、
「勉強すること」と、
「言われること」が、
いつの間にか一緒に
なってしまうことがあります。
教材を見ると、
「やらなきゃ。」
机を見ると、
「また言われるかな。」
そう思っただけで、
始める前から
気が重くなってしまう。
すると、
「あとで。」
「今日は無理。」
となる。
そしてお母さんは、
「やっぱり言わないとやらない。」
と思って、
また声をかける。
どちらかが悪いわけ
ではないのに、
同じところを
ぐるぐる回ってしまいます。
そして、この繰り返しは、
子どもだけでなく、
お母さんも疲れさせてしまいます。
「今日は言わないでおこう。」
と思っていたのに、
また言ってしまった。
そんな自分を責めてしまう
お母さんもいらっしゃいます。
でも、必要なのは、
誰かを責めることではなく、
この繰り返しから少し
外へ出ることなのだと思います。
そんな時、
私は、
「どうすれば、
もっとやらせられるだろう。」
ではなく、
「どうしたら、この子は
始めやすくなるだろう。」
と考えるようにしています。
「やる気があるか、ないか。」
だけで考えなくてもいいのです。
一人では始めにくいなら、
始めやすくなる方法を
一緒に探してみる。
そこから、
流れが変わることがあります。
「一緒にやろう」で、最初の一歩が軽くなることがあります
(後編)
では、
一人ではなかなか
始められない子には、
何ができるでしょうか。
オフィスでよく見るのは、
家ではほとんど
教材を開かなかった子が、
誰かと一緒なら、
思っていた以上に
取り組める姿です。
最初から、
「今日はここまでやろう。」
とたくさん求めるのではなく、
「これ、一緒に読んでみようか。」
から始める。
声に出して
短い文章を読む。
一問だけ
一緒に考える。
10分ほど取り組んだら、
別のことへ切り替える。
分からなければ、
その場で聞けばいい。
止まっても、
また戻ればいい。
そうやって、
最初の一歩を
できるだけ軽くしていきます。
すると、
「やりたくない。」
と言っていた子が、
しばらくすると、
自分から次の教材を
手に取ることがあります。
もちろん、
「一緒にやれば、
必ず勉強する。」
ということではありません。
その日によっても違います。
一緒にやる相手によっても
違うでしょう。
でも、
一人では難しかったことが、
誰かと一緒なら
できることがあります。
私は、
それもその子が持っている
大切な力だと思っています。
最初から、
「一人でできること」を
目標にしなくてもいいのです。
一緒にやることとは、
いつまでも手伝い続けること
でもなく、
甘やかすこと
でもありません。
今は一人では難しいところだけ、
少し力を貸してもらう。
その中で、
「ここなら自分でできそう。」
というところが少しずつ
増えていけばいいのです。
一緒に始める。
一緒に読んでみる。
途中から、
少しだけ自分でやってみる。
そして、
また困ったら助けてもらう。
そんな経験を重ねながら、
少しずつ、
自分なりの始め方を
見つけていく子もいます。
「やらせなければ。」
と思うと、
お母さんも子どもも
苦しくなることがあります。
そんな時には、
「どうしたら、この子は
始めやすいかな。」と、
少し見方を変えてみる。
「勉強しなさい。」では
動けなかった子が、
「一緒にやろうか。」
なら、ほんの少し
動ける日があります。
その小さな一歩からで
いいのだと思います。