坐骨神経痛と診断され薬物治療を続けても症状が改善しない場合、鍼治療は選択肢の一つとなる可能性があります。坐骨神経痛は、腰から足先まで伸びる坐骨神経に沿って痛みやしびれが生じる症状の総称で、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、梨状筋症候群、加齢などが主な原因です。
2023年に発表された30件のランダム化比較試験(2,662名)を統合したシステマティックレビュー・メタアナリシスでは、鍼治療は薬物療法などと比較して、痛みの軽減、日常生活機能の向上、治療成功率の向上が認められ、副作用も少ないことが報告されました。ただし、研究ごとに施術方法などが異なるため、さらなる質の高い研究が必要とされています。
鍼治療の作用機序としては、βエンドルフィンなどの内因性オピオイドの分泌促進、神経周囲の炎症の抑制、脳の下行性疼痛抑制系の活性化が考えられており、神経・炎症・脳の痛みの制御機構に働きかけることで症状の軽減に寄与すると考えられています。
症状の軽減にはセルフケアも重要です。30〜60分ごとに姿勢を変える、股関節やお尻周囲のストレッチを行う、痛みが悪化しない範囲でウォーキングを継続することが推奨されます。一方で、足に力が入らない、排尿・排便障害がある場合は馬尾症候群の可能性があるため、セルフケアを行わず速やかに医療機関を受診してください。
坐骨神経痛は安静だけで痛みが軽減するとは限りません。現在の研究では、鍼治療に加えて運動療法や生活習慣の見直しを組み合わせることが、症状の軽減や再発予防につながる可能性が示されています。症状が続く場合は原因を適切に評価し、自分に合った治療法を選択することが大切です。