運動中に股関節の前面が痛む場合、グローインペイン症候群の可能性があります。特にサッカーやラグビーなど、方向転換やキック動作を頻繁に行うスポーツ選手に多く見られます。
グローインペインは、単一の原因で起こるものではなく、内転筋付着部の腱障害、腹直筋や下腹部筋の付着部損傷など、複数の要素が重なって発症する多因子性の障害です。研究では、運動療法と負荷管理が第一選択とされています。特に、筋力強化と動作制御トレーニングを組み合わせた運動療法は、電気治療やマッサージなどの受動的治療のみの場合よりも疼痛の軽減・競技復帰率が高いことが報告されています。
その中でも、内転筋強化法にはエビデンスがあり、再発予防にも有効とされています。これらのエクササイズは、内転筋の伸ばされながら力を出すおよび静止して力を出す負荷を段階的に高めることを目的としており、腱付着部の耐久性向上に役立ちます。
痛みには、方向転換やキック動作による負荷の蓄積、内転筋と体幹の筋力・制御の乱れが関係しています。これにより、恥骨付近の腱付着部にストレスが集中し、炎症や腱膜変性が生じます。回復が遅れると、痛み→筋力低下→不適切な代償動作→さらなる負荷という悪循環に陥り、慢性化しやすくなります。そのため、局所の筋強化だけでなく、体幹と骨盤の安定性を高める運動が重要です。
実際の対策としては、以下の3つが効果的です。
負荷管理
完全な安静ではなく、痛みを悪化させない範囲で運動を続けることが推奨されます。特に全力キックや鋭い方向転換など痛みを誘発する動作は控え、段階的に負荷を上げていきます。
内転筋の強化
段階的に負荷トレーニングを実施すると、疼痛軽減や再発防止につながる可能性が高いと報告されています。痛みが強まる場合は無理せず負荷を減らすことが大切です。
動作の見直し体幹安定化
単に筋力を強化するだけではなく、切り返し・加速・着地など競技特有の動作で骨盤と体幹を安定させることが再発予防に不可欠です。動作解析・運動連鎖の評価を受けることで、より高い効果が期待できます。
グローインペインは早期の評価と運動療法によって回復が見込める症状です。特に競技復帰を目指す選手にとっては、痛みに応じた負荷管理と機能回復を両立させることが重要です。大会連戦やトレーニング期など負荷が溜まりやすい時期は、日頃のケアを徹底しましょう。