成長期のお子さんで「膝のお皿の下を押すと痛む」「運動後に膝下が腫れる」といった症状が見られることがあります。これは オスグッド・シュラッター病(Osgood-Schlatter disease) と呼ばれる、特にスポーツに励む小中学生に多い成長期特有の障害です。
この病気は、膝蓋靭帯が付着する脛骨粗面(スネの骨の出っ張り部分)に繰り返し牽引ストレスがかかることで発生します。成長期の骨はまだ柔らかく、筋肉や腱とのバランスが不十分なため、強い負担によって炎症や微小な骨の剥離が生じやすいのです。
研究では、Circiら(2017)が「成長期は骨の成長に筋・腱の柔軟性が追いつかず、ストレスが集中する」と報告。Nakaseら(2015)は日本人ジュニアアスリートを対象に調査し、「大腿四頭筋の柔軟性が低いほど発症しやすい」「ストレッチと運動制限を組み合わせると症状軽減が早い」と示しました。
つまり、オスグッド病は単なる「成長痛」ではなく、構造的ストレスと筋肉のアンバランスが原因であることが科学的に明らかになっています。対策としては以下が重要です。
1.痛みがあるまま練習を続けるのは避ける
2.大腿四頭筋のストレッチで柔軟性を高める
3.体幹や股関節の強化で膝への負担を軽減する
4.保護パッドやテーピングは補助的手段として活用
症状は成長が止まると自然に軽快することもありますが、適切なケアを行えば競技を続けながら症状を和らげることができます。とくに「休ませる勇気」と「正しいトレーニング」の両立が、長期的に見て非常に大切です。
さらに、痛みの出る動作や練習量をコントロールし、チームや家族と協力して負担を分散することも回復を早めるポイントです。焦って練習を再開すると慢性化しやすいため、症状の程度に合わせて段階的に復帰することが望まれます。正しい知識と習慣を身につければ、成長期を通じて安全に競技を続けることが可能です。
成長期のコンディショニングは、その後の競技人生にも直結します。ジュニア期から正しい知識をもとにケアを取り入れ、健やかなスポーツライフを送ることが未来の可能性を広げる第一歩となります。