おにだる
日本料理
湯島駅から徒歩2分(130m)
静かな湯島の夜、看板も控えめな「鬼樽」にふらりとお邪魔しました。階段を上がると、こぢんまりとしたカウンターだけの空間。初めてでもどこか懐かしいような、肩の力がふっと抜ける居心地の良さがありました。 まず出されたのは、菜の花の酢味噌和え。春を感じる一皿で、やわらかく茹でられた菜の花のほろ苦さと、やさしい甘みの酢味噌が絶妙に絡み合って、口の中にふんわりと季節の香りが広がります。ひと口目から「今日ここに来てよかった」と感じさせてくれました。 お造りは中トロ、ひらめ、ホタルイカ。中トロは脂がほどよく、舌の上でとろけるよう。ひらめはしっとりした舌ざわりに、淡い甘みがそっと寄り添うようで、ホタルイカは春の海を感じさせる濃い旨味と食感が口いっぱいに広がり、日本酒が進むこと間違いなしの盛り合わせでした。 次にいただいたキンキの煮付けは、骨の周りまでとろっと脂がのっていて、身はやわらかく甘辛い出汁がしっかり染み込んでいます。煮詰めすぎていない絶妙な味加減で、濃厚ながらも品があり、ひとくちごとに幸せが広がるような、そんな煮魚でした。 そして、和牛の一口ステーキ。小ぶりながらも一噛みで脂の甘みと肉の旨味がじゅわっと広がり、香ばしさと柔らかさのバランスが絶妙。見た目は控えめなのに、記憶に残る存在感のある一品です。 途中でいただいた青のりの土佐酢は、爽やかな磯の香りとキリッとした酸味が心地よく、お口直しにぴったり。こういう小さな一皿が丁寧に作られていると、お店の真心が伝わってきます。 お料理ひとつひとつが丁寧で、どれも過不足のない味付け。日本酒も珍しい銘柄が揃っていて、大将にお任せでお願いした一杯が、料理の美味しさをさらに引き立ててくれました。 「鬼樽」は、季節を感じながら、静かに料理と向き合いたいときに訪れたくなる一軒。目立たず、気取らず、けれど確かに心に残る和食のお店でした。
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