差し歯がいろいろと問題を起こすという経験をお持ちの方は多いと思う。
今回は上あごの前歯をイメージして書く。
外れて落ちてしまったということ以外にも、やはり歯ぐきから血が出る、歯ぐきが腫れて赤い、歯ぐきの色が黒い、歯ぐきがやせて歯根が露出しているなどということがあると思う。
前歯に限って言うとより美しい差し歯が、歯ぐきへのリスクがある。
歯ぐきと差し歯の間に歯根があると見た目が悪い。きれいなセラミックを縁取るように黒っぽいラインになってしまう。
そこでセラミックの縁(ふち)を歯ぐきとオーバーラップする形で、深めに入れ込む。歯ぐきでセラミックを隠す形になる。
そうすると非常に見た目が良くなる。
歯ぐきは、やせる(後退する)性質を持っている。
そこで多少やせてもいいようにさらに深めに入れるということが起こる。
ただし、深く入れ込めば入れ込むほど削るのが難しく、型を取るのも難しくなる。
さらに深く削れば削るほど歯が細くなり、神経に近づく。
セラミックの縁は、薄く作れない。厚みが必要なのだ。
削る時に歯ぐきを傷つけるリスクがある。
このようなことを頭に入れ、「いい加減」を探れるのが名医だろう。
歯周ポケットの中はなかなか磨けない。
そんなポケットの中でセラミックと歯根との接合部があるとぴったり入っているかどうか分かりにくい。
万一ピッタリでなく隙間があるとばい菌の格好の繁殖場所になり、歯肉炎になってしまう。
場合によっては、虫歯になってしまう。
虫歯になれば当然黒くなってしまう。
さらに接着剤をきれいに取るのが難しい。
残った接着剤が、歯垢を引き寄せてしまうのだ。
でもそうなったら、「デンタルプラークバスター」という方法がある。
差し歯の手入れで難しいのは、あまり力を入れて熱心に磨きすぎると歯ぐきが後退して歯根が露出して見た目が悪くなってしまうのだ。
磨きすぎに注意しましょう。
歯科楳津医院 院長 楳津徳弘