
産業道路沿いの活気と選択の妙、釜炊きご飯の食堂
鹿児島市の大動脈とも言える産業道路沿いに、その店はあります
全国展開する「まいどおおきに食堂」のスタイルを踏襲し、地域に根差した食堂として多くの人で賑わっています
平日の昼時、広い駐車場はすでに満車に近い状態でした
車を停め、期待と共に入口をくぐると、店内は活気に満ち溢れています
トレーを持って好きなおかずを自分で選び、最後にご飯と汁物を受け取って会計する、いわゆるカフェテリア形式です
この日は混雑しており、行列は長く伸び、先に並ぶ人の背中で全貌を見通すのは難しい状況でした
流れを止めないよう、目に留まったものを直感的にトレーに乗せていきます
焼き物のコーナーで鶏の照り焼きを、煮物のコーナーで茄子を選び取りました
席についてゆっくりと自分の選んだラインナップを確認すると、少々驚きました
茄子の煮物にも鶏肉が使われており、図らずも主菜が重複してしまったのです
これは、混雑の中で瞬時に判断を下さなければならない、このシステム特有の落とし穴かもしれません
選んだのは、鶏照り焼き、茄子の煮物、小ライス、そして豚汁
合計金額は1000円を超えていました
一品一品の単価が積み重なるため、定食として考えるとやや割高に感じられるのは正直なところです
一度トレーに乗せてしまうと戻しにくい雰囲気もあり、選択には計画性が必要でしょう
さて、肝心の味わいです
全体として、多くの人が美味しいと感じるであろう安定感があります
おかずはご飯が進むよう、やや濃いめに仕上げられていました
豚汁は、鹿児島特有の強い甘さは控えめで、万人に受け入れられやすい標準的な味わいです
特筆すべきはご飯でしょう
店先には米ぬかが無料配布されており、釜で炊き上げているこだわりが感じられます
実際、米粒の立った美味しいご飯でした
周囲を見渡すと、常連と思われる客は厨房のスタッフに声をかけ、作りたての料理を受け取っていました
列に並ぶだけでなく、そうしたコミュニケーションを取ることで、より満足度の高い食事ができるのかもしれません
初めての訪問で学んだのは、まず列に並ぶ前に、どのようなおかずがあるのか全体像を把握することの重要性です
慌ただしいランチタイムにおいて、自分の好みや予算に応じて素早く食事を組み立てられる利便性と、選択の難しさが同居する店でした
- 上塩屋駅
- 食堂

名店の出汁が紡ぐ、十割蕎麦とかつ丼の競演
週末の昼下がり、かねてよりその佇まいが気になっていた蕎麦屋を訪れました
広々とした駐車スペースに車を停め、店の入り口へ向かうと「ご予約のお客様のみ入店可」という案内が目に留まります
しかし、幸運なことに、扉を開けて尋ねてみると快く席に通していただけました
その間も、予約なしで訪れる客が後を絶たず、ラッキーでした
店内は、木の温もりを感じる小上がり席とテーブル席が配置され、落ち着いた雰囲気を醸し出しています
看板や店内の掲示を見ると、十割手打ち蕎麦とおでんとあり、この店の二枚看板であることが伺えます
暑い夏日でしたので、今回は看板商品の手打ち蕎麦と、出汁への期待が高まる「かつ丼」をいただくことにしました
通常は小うどんが付くそうですが、看板の蕎麦に変更できるという嬉しいサービスです
待つことおよそ10分、盆に載せられて運ばれてきたのは、背は低いものの直径の大きな丼に盛られたかつ丼と、不揃いな麺が手打ちならではの風情を伝える蕎麦、そして彩りを添える漬物です
まずは、かつ丼から一口
おでんや蕎麦の出汁をベースにしているであろうその出汁は、驚くほど深みと旨味に満ちています
出汁の優しい味わいが、ふわとろの卵と調和し、揚げたてのカツを優しく包み込んでいます
そしてその旨味が、ふっくらと炊かれたご飯にしっとりと染み込んでいて、一口ごとに感動が広がります
ただ、一点だけ、カツが少しだけ硬めに揚がっていたのが惜しまれました
しかし、それを差し引いてもなお、出汁の美味しさが際立つ、完成度の高い一杯です
続いて、期待の十割蕎麦です
口に含むと、出汁と蕎麦の香りが豊かに広がり、その確かな仕事ぶりに感銘を受けます
蕎麦自体も風味豊かで、喉越しも申し分ありません
しかし、一つだけ好みが分かれるかもしれないと感じたのが、多めに使われた柚子の香りです
清涼感はもたらしてくれますが、せっかくの出汁や蕎麦の繊細な風味が、少しだけ柚子の香りに押されているように感じられました
別添えで、好みに応じて香りを加えることができれば、より一層、蕎麦本来の魅力を楽しめるのではないかと思いました
店を出る頃には、次から次へと予約客が訪れ、その人気ぶりを改めて実感しました
次は少し肌寒くなった頃に、この出汁でじっくり煮込まれた、もう一つの看板商品であるおでんを味わいに再訪したいと思います
この店の出汁の魔術を、また違った形で堪能できる日が楽しみでなりません
- 三股駅
- うどん

時が止まる空間で味わう、潔い手打ち十割
姶良市加治木町、高速道路のインターチェンジと国道10号を結ぶ幹線は、日頃から多くの車が行き交う場所です
その道沿いに、まるで時が止まったかのようにひっそりと佇む一軒の古民家的なお店があります
ここが、今回の蕎麦屋です
朝9時から暖簾を掲げるという、この界隈では稀有な存在
朝の光が差し込む時間に、打ち立ての蕎麦を手繰れるというのは何とも贅沢な体験でしょう
店の前に立つと、周囲の喧騒から切り離されたかのような静けさを感じます
古びた看板や暖簾が醸し出すオーラは、一見の客を少しだけ躊躇させるかもしれません
その暖簾をくぐると、そこには唯一無二の空間が広がっていました
店内に入ってまず目を奪われるのは、左手にある土間のような調理場です
そこに鎮座するのは、まるで昔話に出てくるかのような大きなかまど
麺を茹でるための大きな羽釜や、店の命とも言える出汁の鍋が並び、店主が一人、静かにその場を守っています
会計もこの場所で行うという、無駄のない動線に店の歴史を感じます
奥にはテーブル席と、さらにその奥にはゆったりとした小上がりの座敷があり、見た目以上に広い空間です
かつては倉庫か作業場だったのではないか、そんな想像を掻き立てる梁や柱が、この店の空気感を作り上げていました
壁に掲げられた品書きは、「天麩羅うどん」「天麩羅そば」「めし」の三つのみ
この潔さに、店主の揺るぎない自信が窺えます
迷うことなく、暖簾にもその名が染め抜かれていた「天麩羅そば」をお願いしました
ほどなくして運ばれてきた一杯は、実直そのもの
やや浅く大きな丼に、堂々としたかき揚げが鎮座し、その上には青々としたネギが彩りを添えます
丼から立ち上る出汁の香りが、ふわりと鼻腔をくすぐりました
まずは、琥珀色に澄んだ汁を一口
関西風を思わせる出汁の風味がしっかりと感じられ、それでいて鹿児島の蕎麦にありがちな強い甘さは抑えられています
キリリと輪郭の立ったこの味わいは、蕎麦の風味を最大限に引き立てるための計算でしょう
これならば、白飯との相性も抜群に違いありません
そして主役の蕎麦
手打ちの十割と聞いて、少し身構えて啜りました
この土地の十割蕎麦は、素朴で切れやすいものが多い印象でしたが、ここの蕎麦は良い意味で裏切られます
つなぎに何か秘訣があるのでしょうか、まるで二八蕎麦のように滑らかで、しっかりとした歯応えとのど越しを楽しむことができました
かき揚げは、ごぼうの風味が豊かで香ばしいもの
揚げたて熱々というわけではありませんが、それがかえって汁によく馴染み、味わいに一体感を生み出しています
これもまた、店主の狙いなのかもしれません
添えられた大根の漬物が、良い箸休めになります
当地の食文化に根差した、ささやかながらも心憎い演出です
1100円という価格は、日常の昼食と考えると少しだけ贅沢かもしれません
しかし、この独特の空間で、丹精込めて作られた他にはない一杯を味わう時間には、その価値が十二分にあると感じました
昔ながらの空間で、本質を追求した蕎麦と向き合う
たまには、このような豊かな食事の時間も良いものです
ごちそうさまでした
- 加治木駅
- そば・蕎麦

空港近くで発見!地元で愛される物産館
鹿児島空港からすぐ、旅の途中に立ち寄りたい物産館です
広々とした駐車場を完備し、周辺には魅力的な飲食店やフルーツショップも立ち並びます
午後に訪れると、駐車場はほぼ満車で店内も多くの人で賑わっていました
道の駅のように、地元の特産品や新鮮な野菜がずらりと並びます
今回は、心惹かれたお土産の和菓子を2つ選びました
一つは上品な甘さのしぐれ、そしてもう一つが名物のからいも餅です
からいも餅は、南九州で古くから愛される郷土菓子で、つきたてのお餅と甘いさつまいも(からいも)を丁寧に練り合わせたもの「ねったぼ」とも呼ばれ親しまれています
その上に、艶やかなあんこがたっぷりとかかった逸品を見つけ、思わず手に取ってしまいました
どちらも淹れたての鹿児島茶と共にいただくと、口の中いっぱいに広がる優しい甘さが、旅の疲れをそっと癒してくれました
- 嘉例川駅
- グルメその他

混ぜる儀式で覚醒する、鹿児島の王道ラーメン
鹿児島ラーメンの魂とも言える王道、ザボンラーメンへ
ランチの喧騒が落ち着いた時間にも関わらず、店内は熱気に満ち溢れています
鹿児島空港がすぐそこだからでしょうか、旅立ちの前の腹ごしらえや名残を惜しむ人々で賑わいます
この一杯を求めて、遠方からわざわざ訪れるファンがいるのも頷けます
かつては常連だけが知っていた美味しさの秘訣、あの「混ぜる儀式」が、今では誇らしげに掲げられています
期待に胸を膨らませ、まずは券売機で食券を購入します
今日はお腹も心も満たされたい気分、迷わず「チャーシュー麺(1,100円)」を選びました
広々とした店内にはテーブル席とカウンター、そして奥には寛ぎの座敷も用意されています
今回はゆったりとテーブル席へ
食券を店員さんに託したら、水とあの食べ放題の漬物を準備します
いつの間にかセルフサービスに変わっていたのも、なんだか新鮮です
鹿児島のラーメン店に欠かせない大根の漬物が、待つ時間さえも至福のひと時に変えてくれます
そして10分ほどで、待ちに待った一杯が目の前に現れました
丼を覆い尽くすチャーシューの圧倒的な存在感に、思わず心が躍ります
シャキシャキのキャベツに香ばしい焦がしネギと刻みネギ、たっぷりのもやしとキクラゲ、これぞ鹿児島の王道です
最高に美味しくいただくための大切な儀式、「混ぜ」をはじめます
丼の底に眠るスープの真髄と秘伝のかえしを、麺と共に優しく天地返しするように全体へといきわたらせます
全ての具材が一体となった瞬間、最高の物語が始まります
ふわりと広がる優しいとんこつの香り、そこに野菜や魚介の奥深い旨味が溶け込んだスープは、甘めの醤油だれが全てを優しくまとめ上げ、思わずため息が出るほどの美味しさです
これです、これこそが心に染み渡る、慣れ親しんだ鹿児島の味
小麦の豊かな風味を感じる中太麺は、つるりとした喉ごしがたまりません
途中で卓上のニンニクを少し加えれば、また新たな感動が待っています
心もお腹も満たされる懐かしの一杯、最高の鹿児島ラーメンをごちそうさまでした
- 嘉例川駅
- うどん