一半

難波に根を張る老舗『一半』は、創業から半世紀近く経つにも関わらず、白木のカウンターと板場の木が新しさを保つ落ち着いた空間を提供します。店内に一歩踏み入れると、職人の醸し出す緊張感とゆったりとした雰囲気が心地よく感じられるのが魅力です。かつては吉本芸人たちの憩いの場ともなっていたと聞き、その歴史を垣間見ることができます。

食事の始まりは、お造り盛合せから。鯛のプリッとした食感、とろの口の中で溶けるような甘さ、そして烏賊の張りのある身の甘みは、まさに絶品。赤貝のコリっとした食感と旨磯味は、味覚だけでなく嗅覚にも幸福をもたらします。

握りでは、鯛が再び登場。お造りでの美味しさをそのままに、シャリとの一体感が際立っていました。雲丹の旨甘磯味、とろの滑らかな舌触り、そしていくらのパリッとした弾ける食感は、一貫ごとに寿司の真髄を味わい尽くさせてくれます。

お酒には「酔鯨」を選び、冷酒でいただくことで、寿司の味わいをさらに引き立てました。まるでお酒と寿司が共演する和食のオーケストラのよう。どちらも素材の良さが際立つ『一半』の料理は、訪れるたびに心を奪われる極上の味でした。