「話すこと」は、
学びの入り口なんです。
「うちの子、最近
なにを考えているのか
分からなくて…」
そんなお母さんの声を、
私はこれまで
何度も聞いてきました。
特に思春期に差しかかる頃、
子どもたちは
親との会話が少なくなりがちです。
けれど、もしかすると
「話さなくなった」のではなく、
「ゆっくり話を聴いてもらう時間」が
減っているのかもしれません。
先日のセッションで、
ある生徒さんが40分以上も、
自分の体験を語り続けました。
夏の思い出、
友達との関係、
旅行での発見、
家族とのやりとり…。
どの話にも、
イキイキとした
息づかいがあり、
まるで
映画のワンシーンのように
鮮やかでした。
私は
ほとんど口をはさまず、
ただ、うなずきながら、
「それでどう思った?」
「楽しかった?」と、
ゆっくり問いかけるだけ。
すると、語るうちに
その子の表情が
どんどん明るく
変わっていきました。
話すことで、
体験が整理され、
「自分のことばで伝えられた」
という手応えが
自信へとつながっていく。
そんな瞬間に、私は
何度も立ち会ってきました。
この日、
話し終えた生徒さんは、
そのままオフィスで
ぐっすりと
眠ってしまいました。
しかも、60分間の深い眠り。
まるで
「出し切ったよ」
と言わんばかりに、
穏やかな寝顔。
話すことって、
それだけで
エネルギーを使います。
言葉をつむぐというのは、
頭と心を
同時に動かす作業だから。
だからこそ、
思いっきり話せる場所が
あるというのは、
子どもにとって
とても安心できることなのだと
あらためて感じました。
「話すこと」は、
ただの言葉のやり取り
ではなく、
自分を見つめ直し、
整えていく大切な時間。
誰かに受け止めてもらうことで、
心の奥にある
「伝えたい気持ち」が、
少しずつ
動き出すのかもしれません。
思春期の子どもたちにこそ、
こうした
「語りの時間」が必要なのだと、
あらためて感じました。
静かに聴いてくれる
大人の存在は、
未来への一歩を踏み出す
大きな力になります。

話を聴くということ。
それは、最も優しい
学習支援の形だと、
私は思います。
私たちはつい
「話すこと=勉強ではない」
と思いがち。
けれど実際には、
自分の体験を
順序立てて話すこと、
そして
相手に伝わるように
工夫することが、
作文や国語、
英語やプレゼンの
基礎となります。
例えば、
「この順番で話した方が
わかりやすいかな」
と考えることは、
読解問題で
因果関係や論理展開を
つかむ力になります。
また、
「どうしてそれが
印象に残っているのか?」と
自分に問い返すことは、
自分の言葉で
表現する力の芽ばえです。
何より、
話を聴いてもらうことで、
心にたまった
不安やモヤモヤが
スウーッと融けていく。
この安心感こそが、
子どもたちの
「心の安全基地」を育てます。
話す。
聴いてもらう。
眠る。
このサイクルは、子どもが
「安心して自分を出せる場」を
手にしている証拠です。
その場は、
次の行動や
チャレンジへのエネルギーを
静かに育てています。
日々のセッションでも、
「今日はこんなことがあってね」と
ポツリと
語り出す生徒がいます。
その一言から、
勉強や人間関係のヒントが
見えてくることもあります。
だから私は、
話してくれた内容を
「ただの雑談」とは
思いません。
その中にこそ、
学びへの糸口があると
私は信じています。
お母さんへ。
もしお子さまが、
話しているうちに
声が明るくなったり、
話し終えたあとに
フゥーッと
深呼吸していたなら……
学習的にも、
大切な「力の芽」が
伸びようとしている瞬間です。
その芽が生まれる土壌を、
誰よりも
温かく耕してきたのは、
お母さん、
あなたです!!
お子さまが
言葉に詰まったときも、
急がせないでください。
その「沈黙」は、
心の奥から
言葉を探している証です。
言葉に詰まりながら
話そうとする姿には、
自分の気持ちを
大切に扱おうとする
意志が込められています。
うまく話せなかった時には、
そっと微笑んで
「聞けてよかったよ」
と伝えてあげてください。
その一言が、
お子さまにとって
何よりの学びの力になります。
