「この子、何をやっても変わらないんです。」
そう話してくださった
お母さんの言葉に、
私は静かにうなずきました。
お子さまのことで
毎日悩みながら、
それでも
何かできることはないか
と探し続けている・・・
そんなお母さんに、私は
これまで何人も
出会ってきました。
うまくいかない日もある。
感情がぶつかってしまう
日だってある。
それでも、その奥には
いつも変わらぬ
「あたたかな想い」が
流れている。
私はそう感じています。
今回ご紹介したいのは、
そんなお母さんと、
そしてお父さん、
そして小学4年生の
女の子・Aちゃんのお話です。
Aちゃんは、これまで
いくつかの習い事を
経験してきました。
けれど、
うまくなじめなかったり、
厳しく叱られたり。
ときには
心に傷を残すような
経験もあったそうです。
ある先生には
「もう来なくていい」と言われ、
Aちゃんにとって
「習い事=つらい場所」
という印象が、
いつの間にか心に
根を張ってしまった
のかもしれません。
今回、私から夏の
セッションをご提案したとき、
お母さんは
少し迷いながらも、
こんなふうに
話してくださいました。
「正直、私も不安です。
でも、音読会で
先生のお話を
聞いているうちに、
[もしかしたら…]って
思ったんです。」
お母さんは、
この1年ほど、
ほぼ毎月のように
私の主宰する音読会に
ご参加くださいました。
Aちゃんのために、
自分の目で見て、
耳で聞いて、
納得できるもの
だけを選びたい。
その姿勢が、私には
とてもまっすぐで、
何よりも大きな
「愛情の力」に思えました。
そしていよいよ、
この夏、
Aちゃんのセッションが
決まりました。
ご夫婦で資料にも
目を通してくださり、
その後、
お母さんから届いた
メッセージには・・・
次のような、
やさしい変化が
記されていました。

「主人は、Aは
何をやっても変わらない
と思っていたようです。
でも、
先生の資料を読んだあと、
Aの頭をなでて、
[楽しんで行っておいで]って
声をかけたんです。」
その言葉を読んだ瞬間、
私は感動してしまいました。
誰よりも我が子を
案じてきたお父さん。
厳しく映るその言葉の裏に、
どれほどの思いが
重なっていたことでしょうか。
お母さんのメールの行間から、
私は
その愛情を感じ取っていました。
そうです。
「楽しんでやっといで」
という言葉には、
深いメッセージが
込められています。
勉強って、しんどいこと
ばかりじゃないんだよ。
Aちゃんが
少しでも「できた」って感じたら、
それは凄いことなんだよ。
最初は小さな一歩かもしれない。
でも、
誰かと一緒に歩けば、
きっと楽しくなるよ。
そんなメッセージが、
お父さんの一言で
伝わった気がしました。
私が目指しているのは、
「やらされる勉強」
ではありません。
自分の中に
「できた!」という手応えを、
静かに積み重ねていくこと。
Aちゃんには、
漢字検定の10級からスタートし、
9級、8級へと
階段をのぼるような
流れを用意しています。
長時間の勉強が苦手なお子さんでも、
無理なく取り組めるように、
漢字⇒計算⇒集中ゲーム…
といったリズムある構成です。
さらに、お母さんにも
ご参加頂きながら、
「こういうときには、
こんな声かけが効果的です」
というヒントもお伝えします。
お母さんのまなざしと、
そっと添えるぬくもりが、
Aちゃんの毎日に
小さな「光」を灯してくれます。
このように、私は願いながら
セッションに向き合っています。
「この子は、やればできる」
「この子には、ちゃんと力がある」
そう思える時間が
少しでも増えたら…
とても尊い変化です。
Aちゃんのように、
「もう無理かも」
と思われていたお子さまが、
ある日ふと、
「あれ? 少し変ったかも」
と感じられる。
かけがえのない出来事です。
私は、その
「始まりの一歩」に
立ち会えることに、
心から感謝しています。
この夏、Aちゃんが
「できた!」の笑顔を重ね、
ご家族にも暖かな時間が
増えることを願っています。
