中学生になると、
学びも人間関係も、
急に
複雑になっていきます。
教科書の内容は
ぐんと抽象的になり、
友だちとの会話も
スピードが上がり、
ちょっとした言い回しや、
空気の読み合いが
求められるようになります。
そんな日々の中で、
「ことば」に不安を感じる
子どもたちが、
確実に増えています。
「わかっているのに、うまく言えない」
「話したいのに、言葉が出てこない」
「伝えたくても、どう言えばいいのかわからない」
そんな声にならない
もどかしさを、毎日、心の中に
抱えている子がいるのです。
Dくん(中学2年)も、
その一人でした。
もともと、あまり多くを語る
タイプの子では
ありませんでしたが、
中学生になってから、
家での会話は
さらに少なくなり、
お母さんが
何か話しかけても、
「べつに」
「ふつう」とだけ
返ってくるように
なっていきました。
ときには
「うるさい」
「わかってない」と、
強い言葉で
シャットアウトしてしまう
場面もあったそうです。
そしてある日、
担任の先生から
連絡が入りました。
「最近、Dくん、友だちと
話していないようです」
部活動もやめ、学校でも
ひとりで過ごす時間が
増えているとのことでした。
でも、Dくんは
反抗しているわけでも、
誰かを拒絶しているわけでも
なかったのです。
彼がいちばん
苦しんでいたのは・・・
「自分の気持ちが、
うまく言葉にならないこと」でした。
私たちのセッションで、
まず彼に伝えたのは、
「ここでは、無理に
話さなくていいよ」
ということ。
文章が書けなくてもいい。
話せなくてもいい。
代わりに、
絵を見たり、
ことばを選んだりしながら、
少しずつ、
自分の内側にある
気持ちに
目を向けていく。
そんな、ことばの
「準備運動」のような時間を、
静かに重ねていきました。
そして、ある日の
読解ワークの時間・・・
彼は、ぽつりと
つぶやいたのです。
「この人、全部
わかったふりしてる。
なんか……ムカつく」
その「ムカつく」が、
彼にとっての
ことばの突破口でした。

その「ムカつく」
という一言が、
彼のことばの
扉を開く
きっかけになったのです。
そこから彼は、
イライラの正体に
名前をつけ始めました。
「こういうとき、なんかグッとくる」
「うまく言えんけど、苦しい」と、
自分なりの表現で
気持ちを
語ってくれるのです。
最初は
数行しか書けなかった作文も、
今では400字を超えています。
お母さんからも
「最近、自分の気持ちを
話してくれるんです」と
ご報告をいただいています。
思春期の子どもたちは、
「わかってほしい」気持ちと、
「伝えられない」もどかしさの
間で揺れています。
沈黙は
拒絶ではなく、
「ちゃんと受け止めてくれる
人を探している」
というサインです。
私たちの
言語能力開発プログラムでは、
そうしたお子さまたちに
必要な力を少しずつ
取り戻していく
お手伝いをしています。
中学生になってから
急に国語が難しくなった、
文章題や問題文の
意味が読み取れない、
話すのが苦手で
誤解されやすい・・・
そんな不安を抱えている
お子さまには、
音読や語彙の再構築、
作文、対話の練習を通して、
「わかる」
「使える」
「伝えられる」といった
ことばの力を、
育ててゆきます。
大切なのは、
暗記やテストのための勉強
ではありません。
自分の気持ちを
ことばにできること。
考えを整理して
伝えられること。
そんな
「ことばの自信」を
取り戻すことです。
そして
「伝わった」
「わかってもらえた」という
体験を重ねるうちに、
少しずつ、自分の声を
外の世界に届けられるように
なっていきます。
中学という多感な時期に、
ことばを失いかけていた子が、
「話すのが楽しい」
「ことばって、ちょっと面白い」と
感じられるようになる。
それは、学力や成績
以上に、
これからの人生にとって
大切な力です。
お子さまのことばや学びに
不安を感じておられるなら、
焦らずに、一緒に
歩んでください。
ことばは「生きる力」です。
お子さまの中にある
「伝えたい」という気持ちを、
丁寧に育てる
時間と環境を、
ご用意しています。
スタディ・コーチング・ラボラトリー
代表 福田秀一
