最近、小学1年生・2年生の
お子さまに関するご相談が、
続いています。
「学校に行きたがらないんです」
「教室でじっと
座っていられないんです」
「読み書きが苦手で、
数字もなかなか頭に入らなくて……」
お話しくださる
お母さんたちの声は、
深い不安でいっぱいです。
中には、
「発達障害ではないかと
診断をすすめられました」と、
お話になる方もいらっしゃいます。
どこに相談すればいいのか分からず、
スクールカウンセラーに聞いても
「様子を見ましょう」と
言われるだけ。
答えのない不安を
一人で抱えている……。
そんなお母さんたちの姿に、
私は最近、これまで以上に
心を動かされています。
実を言えば、
私はこれまで、
小学校低学年のうちは、
無理に学ばせるよりも、
「のびのびと遊ぶこと」
「安心して過ごせる時間」を
優先すべきだと考えてきました。
だからこそ、
ご相談をいただいても、
「今は私のオフィスに通うより、
児童デイサービスなどで
ゆっくり過ごすのがいいですよ」
とお伝えすることが多かったのです。
でも今、ご相談にいらっしゃる
お母さんたちは、
「待つこと」すらも
苦しみに感じておられます。
「このままでいいの?」
「何もしないでいる間に、
大事な時間が過ぎてしまうのでは?」
そんな思いが、
表情にも、
ことばにも、
あふれているのです。
「わが子を、何かしてあげたい。でも、
どうしたらいいのか分からない」
「焦らせたくはない。でも、
何もしないのは不安」
・・・このような葛藤は、
お子さまを深く愛している
からこそ生まれるものです。
そこで、私の心に浮かんだのが、
「母子で
一緒に取り組むコーチング」でした。
これは、私のオフィスに
通ってくれているAちゃんとお母さんが、
すでに始めている方法です。
最初は、会話も
うまく噛み合わず、
「この子は何を考えているんだろう?」
と戸惑うことも多かったそうです。
けれど、音読を通じて、
少しずつ少しずつ、
ことばのやりとりが生まれ、
やがて
笑顔が交わされるようになりました。
それはまるで、
「ことばの種」を
一緒に土に蒔いて、
「芽が出るのを、母子で
肩を並べて待つ時間」
のようでした。

このプログラムでは、
テストで良い点を取ることや、
他の子と同じようになることを
ゴールには
していません。
むしろ大切にしているのは、
お母さんと
目を合わせて話すこと。
読み聞かせに耳を傾けること。
絵を見ながら、感じたことを
口にしてみること。
そんな、小さな積み重ねです。
それこそが、
「お子さまの安心」と
「お母さんの自信」の両方を、
育ててくれるのです。
ですから、たとえ最初は
1行しか読めなくても、
3つの言葉しか交わせなくても、
大丈夫。
その1行が、
その3つの言葉が、
やがて土台となります。
自信の芽が出てくる日が、
きっとやってきます。
もちろん、
「他の子と同じように
学べるようになるの?」
「ちゃんと授業についていける?」
そんなふうに、
不安に思われるお気持ちも、
よく分かります。
けれど、どうかご安心ください。
このプログラムには、
急がせる人も、
比べる人もいません。
ここにあるのは、
「ありのままの今」を
大切にしながら、
お母さんとお子さまが
一緒に笑顔を育てていく。
そんな時間です。
たとえば、
ある男の子のお話です。
最初は、言葉が
なかなか出せず、
文字を前にすると、すぐに
身体が固まってしまいました。
お母さんが声をかけても、
反応はうすく、
「ことばにする」ということが、
とても高い壁のように
感じられていたのです。
でもある日、その子は
ふっとお母さんの方を見て、
こう言いました。
「ここ、いっしょに読んで」
それは、本当に
小さな声でした。
けれど、そのひとことは、
点数では測れない、
でも確かな
「つながりたい」という
芽ばえのサインだったのです。
お母さんの目からは、
静かに、そして温かく、
涙があふれました。
お子さまが、自分の意志で
ことばを選び、
お母さんに気持ちを向けた
その瞬間。
私はそれを、
「未来への扉が、
ひとつ開いた瞬間」だ
と感じました。
焦らなくていいのです。
「学ばせる」ことよりも、
「感じあう」こと、
「通じあう」こと。
その時間が、なによりの
栄養です。
スタディ・コーチング・ラボラトリー
代表 福田秀一
