お母さんへ。
もしかすると今、お子さんが
学校に行けていないことに、
不安や焦りを感じていらっしゃる
かもしれませんね。
「このままで大丈夫なのかしら」
「勉強が遅れてしまうんじゃないか」
「この先、どうなってしまうの?」
そんな思いが胸の中に渦巻いて、
夜、眠れなくなることも
あるかもしれません。
でも、それはとても
自然なことです。
誰だって、
わが子のことを思えば、
不安になるのですから。
けれど、どうか
思い出してください。
学びって、本当は
「学校」だけにあるもの
ではないんです。
私のもとに通っている
ある男の子のことを
お話します。
彼も、長い間ずっと
教室に入れずにいました。
「学校って、
息が苦しくなるから
行きたくない」
そう言った彼は、最初、
部屋の隅っこに座り、
小さな声しか出せませんでした。
けれど、その彼が少しずつ
変わっていったきっかけは、
毎日たった10分の音読でした。
本を開いて、一行読む。
それだけで、最初は
ヘトヘトになります。
何かをがんばるエネルギーも、
声を出す勇気も、
ずっとしまいこんでいた心には、
大仕事だったのでしょう。
でも、
読み終えたあとに
「今の声、よかったよ」
と声をかけると、
ほんの少し、うれしそうに
顔がゆるみました。
目をそらしながらも、ちゃんと
聞こえていたそのひとことが、
心の中に、静かに
しみ込んでいったのだ
と思います。
その10分が、彼にとっての
“心の畑”だったの
かもしれません。
声を出し、
自分の音を聞くことで、
眠っていた「ことば」が、
ゆっくりと
芽を出し始めたのです。
私たちは、
「勉強=教科書」
「学び=進度」
と思いがちです。
でも、子どもの心が
耕されていないところに、
知識は根づきません。
たとえば、
乾いた土の上に
どんなに立派な種をまいても、
芽は出ませんよね。
まずは、
土をやわらかく耕し、
水を注ぎ、
光を届けること。
それと同じように、
心がほぐれ、自分の声に
少し自信が
持てるようになること。
それが
「学びの再出発」にとって、
何よりも
大切な一歩です。

今日からできることが
あるとすれば、それは、
「何かを教えようと
しない時間」
をつくることです。
たとえば、お母さんが
一冊の本を
読み聞かせるだけでもいい。
子どもがうなずいたら、
「そう思う?」
と返すだけでもいい。
そのやりとりは、ほんの数分で
終わってしまう
かもしれません。
けれどそれが、
カラカラに乾いた地面に、
そっと
水をしみこませるような
時間になります。
お子さんが
また歩き出すには、
安心して根を伸ばせる
「場所」が必要なんです。
「今日はおいしいおやつを
作ってみようか」
と台所に一緒に立つ。
「昔好きだったアニメ、
久しぶりに一緒に
観てみようか」
と声をかけてみる。
それだけでも、
子どもの中で
何かが
ふっと
ほどけることがあります。
「勉強じゃなくても、
こうして
一緒にいる時間が好き」
その想いを、無言のうちに
受け取っている子どもは
たくさんいます。
大切なのは、
「できたこと」よりも、
「一緒に過ごしたこと」。
それが、心に
根を張る力になります。
どうか、
焦らないでください。
今、お子さんが
家にいる時間は、
決して
「止まっている時間」
ではありません。
それは、心を
育てなおす
チャンスの時間です。
大丈夫。
お子さんの中には、まだ
言葉になっていない
「芽」が、
ちゃんと息づいています。
その芽が出るときを信じて、
待ってあげること。
それこそが、
お母さんにしかできない、
いちばんのサポートです。
あなたの存在が、
今日も静かに、お子さんの
土台を支えています。
そしてその姿を、
私は心から信じ、
応援しています。
この記事を読んで
「うちも、できそうなことがありそう」
と思われたら、いつでも
ご相談ください。
お子さんのペースで、
少しずつ一緒に
「学びなおし」の道を
歩いていきましょう。
