お母さんへ。
この文章に目をとめてくださって、
ありがとうございます。
もし今、誰にも相談できないまま、
ただ時間だけが過ぎていくような
日々を送っていらっしゃるとしたら・・・
その胸のうちに、
不安や孤独を抱えておられるのなら・・・
この記事は、あなたのためのものです。
私は、この一年ほど、
毎月「読書会」という形で、
小さな「お茶会」を開いてきました。
でも、それはたくさんの人が
参加して下さるにぎやかなイベント
――ではありません。
実は、この読書会、
たった一人のお母さんのために
開催したものだったのです。
そのお母さんにも、
不登校のお子さんがいらっしゃいました。
でも、セッションや学習に
取り組める段階ではなく、
ご家庭にも、
それを受けとめる余裕が、
まだ整っていませんでした。
きっとご本人のお母さんが
いちばん、そのことに
苦しんでおられたと思います。
自分で何かをしようにも動けず、
支援に踏み出すにも、
タイミングが合わない。
心の中で何度もため息をつきながら、
「このままで大丈夫なのか」と
自問しておられたことと思います。
私は、そんなお母さんに出会って、
何かお手伝いができないか
と考えました。
でも、無理に変化を求めてもいけない。
焦らせてしまっては、逆に
プレッシャーになるかもしれない。
そう思って、
毎月1回だけ、「読書会」という形で、
気軽につながれる時間を
ご用意したのです。
名前は「読書会」ですが、
堅苦しいものではありません。
一緒に一冊の本を読み、
そこから感じたことや、
心に残ったことを、
そのお母さんのペースで、
少しずつ語っていただく。
それだけの時間です。
読書会のあとには、
そのまま静かに、1時間ほどの
カウンセリングを続けてきました。
心に浮かんだこと。
家の中で起きたちょっとした出来事。
お子さんがぽつりと口にした言葉――
そうした何気ない話の中に、
大切なヒントが
たくさん隠れていました。
そして、
何より大事だったのは、
「話してもいい場所がある」
と感じてもらうことでした。
この読書会の告知は、いつも
たった3時間ほどしか掲載しません。
そのお母さんの
申し込みが確認できたら、
すぐにページを閉じます。

だから、
他のお母さんにとって、
イベント情報としては、
ほとんど存在しないような
ものかもしれません。
でも、それでいいのです。
なぜなら、この読書会には、
はじめから、
ある想いがありました。
それは、
「まだ声を出せないお母さんにも、
届く場所を用意しておくこと」。
人は、大人も子供も
話せるようになるまで、
時間がかかることがあります。
がんばって話そうとすると、
逆に涙がこぼれてしまったり、
言葉がうまく出てこない日もある。
それでもいいんです。
それでも、「そのまま」を
受けとめてくれる誰かがいるとしたら、
人は、それだけで少し、
呼吸がしやすくなるかもしれません。
今、この読書会が不要な方も、
大勢いらっしゃるでしょう。
「うちはもう支援を受けているから大丈夫」
「今は気持ちがついていかない」
そんな状況の方も多いと思います。
でも、どこか心の片隅に
残しておいていただけたら、
うれしいのです。
いつかふと、
と思い出してもらえる瞬間。。
「あの人が、あの場所が、
こんなふうに待っていてくれた」
そのとき、静かに
つながっていただけたら、
私は本当に幸せです。
たった一人のお母さんのために
開催を続けてきた読書会は、
私自身にとっても、
大きな学びの場でした。
お母さんの心に寄り添うということ。
言葉にならない思いに
耳を澄ますということ。
そして、支えるとは、
変えようとすることではなく、
「そばにいること」なのだということ。
それを教えていただいた
貴重な時間でした。
この読書会は、これからも
静かに続けていきます。
必要としてくださる方が
一人でもいる限り、
私はその方のために、
扉を開けておきます。
たとえあなたが、
まだ「話す」準備ができていなくても、
静かに開いている
ドアの向こうに、
「ここにいますよ」
と手を振る誰かが待っている。
そのように感じて頂けたら、
それだけで十分です。
どうか、あなたのタイミングで。
言葉になる日がきたときに、
ご参加下さい。
この読書会が、
本当に困っているお母さんの、
心の道しるべになりますように。
心を込めて。
スタディ・コーチング・ラボラトリー
代表 福田秀一
