「論語って、むずかしそう」
そんな印象を持つ方も
多いかもしれません。
でも、
ある中学生の女の子にとって、
論語は
「声を出す喜び」につながる
大切な時間です。
彼女の名前は、ここでは
「Aちゃん」としておきます。
Aちゃんは、
場面緘黙(ばめんかんもく)
「特定の場所で声が出せなくなる状態」
と向き合ってきました。
そんな彼女が、いま
笑顔で取り組んでいるのが
論語の「会読(かいどく)」です。
会読とは、先生と一緒に
声を合わせて読むスタイル。
一人では声を出せない
Aちゃんも、
「一緒に読む」という
安心感の中で、
少しずつ
声を響かせるようになりました。
「一人は怖いけど、
誰かと一緒なら大丈夫」
「先生がリードしてくれるから、
安心できる」
そんな気持ちが支えとなり、
やがて
「一人でも声が出せるかも」という
自信が生まれ始めています。
論語のリズムには
不思議な力があります。
短くてリズムの良い文を
声に出すことで、
不安で速くなりがちな
呼吸が落ち着き、
心が整っていくのです。
「人としてどう生きるか」
「礼の心」
「思いやり」などの教えも、
素直に心に届きます。
まさに、論語の言葉たちが
そっと背中を押してくれています。
Aちゃんは、ある日
こう言いました。
(筆談です)
「一緒に読むの、楽しいな」
この体験が、
「話してみたい」
「伝えたい」という
気持ちの芽生えに
つながっていきます。
論語の会読は、
単なる受験準備
ではありません。
それは・・・
心がほっとするリズム
誰かと一緒に取り組む安心感
言葉を超えた「心の交流」
そんな時間です。
音読の積み重ねは、
やがて
語彙・読解・表現といった
国語力を育て、
さらに、
「思考力」や
「伝える力」といった
生きる力の土台になります。
声を出すって、
気持ちいい。
誰かと一緒に読むって、
心が温かくなる。
そんな小さな奇跡が、
子どもたちの未来を
やさしく照らしてくれます。
論語の会読には、
そんな力が
潜んでいるように思います。

セッションが始まると、
Aちゃんはニッコリ
笑顔を見せながら、
椅子に腰かけ、
教材を手に取ります。
岩波文庫の『論語』開いて、
私はゆったりとした声で
読み始めました。
その声に合わせて、
彼女も口を
小さく動かし始めます。
まだ声にならない日もあります。
でも、それでいいのです。
「声が出なくても大丈夫」
「口を動かすだけで十分」
ゆるやかな環境が、
彼女の緊張をほどき、
安心感を広げます。
かすかに、
Aちゃんの声が
聞こえた瞬間。
ささやきのような
小さな声でしたが、
その響きはまっすぐで、
真剣で、
何より嬉しそうでした。
その日のセッションでは、
論語の会読のあと、
漢字検定の音読リハーサルに挑戦し、
中学英語の例文も
集中して読み進めました。
数学の応用問題にも取り組み、
心地よいリズムで学びが続きます。
最後には、
ボイストレーニングの教材も
一緒に見ました。
「歌がうまくなりたいな」
「声の出し方、知りたい」
そんな前向きな言葉が、
自然と流れてきます。
論語の音読も、
英語の例文も、
声のトレーニングも・・・
すべてが、彼女にとって
「声を取り戻す旅」の一歩です。
その歩みは、
自信を育て、
学びへの意欲を広げていきます。
声を出すことは、
ただ音を響かせるだけではなく、
自分の思いを
伝える力を育てること。
それは、将来へ向かう
力強い準備にも
つながります。
セッションを終えたあと、
Aちゃんは静かに
つぶやきました。
「なんかね、
できたって感じがして、
ちょっと嬉しい」
その一言に、これまで
積み重ねてきた努力の
すべてが込められていました。
そして、
その姿を見守ってきた
お母さんの深いまなざしも、
そこに重なっていたようです。
Aちゃんと同じように、
少しずつ
「声」と「心」を取り戻す
お子さんが増えています。
話せないところから
始まる物語。
声が出ないことから
芽生える、
新しい可能性。
あなたのお子さまにも、
「声を出すって、気持ちいい」
そんなふうに感じられる日が、
きっとやってきます。
その第一歩を、
あなたと一緒に歩めたら、
私たちは、
心から嬉しく思います。
