富じ美

板橋の閑静な住宅街に佇む「富じ美」。
店名に込められた「富」と「美」の文字通り、
豊かで美しい和の世界が広がっています。
格子戸を開けると、季節の花が活けられた
床の間が目に入り、
その瞬間から特別な時間が始まります。
カウンターに座ると、大将の丁寧な手仕事が
目の前で展開されます。
その所作一つ一つに、美への追求が感じられます。
「おまかせコース」を注文すると、
まず運ばれてきた先付けから、
器と料理の見事な調和に目を奪われます。
お造りは、真鯛と平目の二種盛り。
白磁の器に美しく盛られた姿は、
まさに一幅の絵のよう。
煮物椀は、筍と木の芽。
漆塗りの椀から立ち上る湯気と共に、
春の情景が広がります。
焼物は、のどぐろの西京焼き。
味噌の香ばしさと魚の艶やかな焼き色が、
目でも舌でも愉しめる一品。
炊き合わせには、新じゃがに蕗、たけのこ。
一つ一つの野菜が丁寧に仕上げられ、
豊かな季節感を感じさせます。
お食事は、桜海老の炊き込みご飯。
土鍋から立ち上る香りと共に、
春の恵みの豊かさを感じます。
器は、有田焼や備前など、
料理の趣に合わせて選ばれた
美しい品々が使われています。
大将との会話も心地よく、
器の由来や料理への想いを
静かに語ってくれます。
常連のお客様も多く、
皆さん料理と器の美しさに
心を奪われているよう。
価格も良心的で、
この豊かな美食の世界を
気負わず楽しめるのが魅力です。
また新しい季節の訪れと共に、
この美しく豊かな空間を
訪れたいと思います。
心からのごちそうさまでした。