不動産のハローサンキュー（８６３９）

地下鉄天神駅で降りて10分ぐらい歩いたかな。裏道の繁華街の中にあるお店です。
靴を脱いで上がるとカウンター7席ほどの漬け場が広がります。

[この日のお任せ]
(つまみ)からすみ餅、浅利、お造り、烏賊の麹漬け
(握り)たいらぎ、イサキ、赤むつ、ひらまさ、海老、赤海胆、赤貝、鳥貝、白みる貝、
ヅケ、中トロ、細魚、鯵、アオリイカ、春子、鱚、小鰭、穴子、玉子焼、鯵

まずは突き出しでからすみ餅をいただきます。海苔と焼き餅の香りが香ばしいです。
からすみ自体は上品な味わい。もう少し強くてもいいかな、とも思いましたが、
スターターとしてはこれでいいのかな。

握りの前に少しつまみをいただくことに。まず供されたのが浅利を炊いたもの。
三つ葉が添えられます。有明海産だという浅利が素晴らしいです。
ほんのりとした薄味の中から極上の甘みがやぅてきます。
浅利自体も良いものだと思いますが、これで一気にご主人の腕前に引き込まれました。

続いてはお造り。鯛、イサキ、鮪、蛸、ひらまさです。
もっちりと柔らかい鯛は絶品。軽く炙ったイサキは良い香りが身の旨みを引き立てています。
紀伊勝浦の340kgものだという鮪は鮮烈な旨みと酸味。絶品です。
関門海峡の蛸は柔らかく身が締まっていて奥深い甘みを感じます。

ここで、他のお客さんがいただいていてとても美味しそうだったので、
烏賊の麹漬けをお願いしました。
一年ほど漬けたという麹漬けは、爽やかな柑橘系の香りを漂わせています。
口に含むと、うーん、広がる澄み切った味わい。素晴らしいです。
ありがちな雑味などは微塵もなく、
押し寄せてくる清洌で濃厚な旨みにただ圧倒されるばかりです。
これはちょっと凄いですね。

麹漬けの余韻に浸りながら握りへ。小振りでやや硬めのすっきりした印象の舎利です。
ほどけ方は絶妙。ちょうど良い温かさでネタと馴染みます。ネタの切り付けはやや厚め。
たいらぎは身の甘さが印象的です。赤むつは脂の乗りが上々。
海老はボイルで。これも身の甘さが引き立っています。
赤海胆は握りで。コクが絶品。軍艦ではなく握りで食べさせるところに腕前を感じます。
赤貝はシャキシャキと鮮烈で清々しい味わい。はしりの鳥貝は爽やかな香りと旨み。
丁寧に隠し包丁が入れてある白みる貝はサックリとした歯応えと甘みが心地良いです。
ヅケは好みより心持ち漬け加減が強いかな。中トロは脂の乗りと旨みが最高。
細魚は繊細。鯵は鮮烈な香りと奥深い旨みで個人的にはこの日の白眉でした。
アオリイカはねっとりした食感が絶品。小鰭はちょうど良い〆加減。
ただこれも煮切りが前面に出すぎるか。
穴子は軽く炙って。香り高く柔らか。個人的には炙った方が好きなのでこれは嬉しいです。
ふんわりと優しい玉子焼をいただいた後は、鯵をもう一貫いただいて計20貫。
こちらのお鮨をたっぷりと堪能させていただきました。

スタイルは基本的に江戸前。ネタの質は銀座の一流店にも匹敵するものです。
この内容で20貫いただいて、お酒も飲んで¥17,000は、むしろ安いと思います。
地物でも最高のものは築地に行ってしまう今、
これだけの品質の魚を揃えられる努力は大変なものがあると思います。
ご主人は最初は比較的寡黙ですが、
かと言って妙な求道的雰囲気が流れているわけでもなく、そのうちいろいろ話してくれます。
ネタへの拘りはやはり相当なものです。
つまみの種類は少なめのようですが、その分、握りで勝負するという気概を感じます。
それでいて厳選された酒肴も絶品揃い。
特に烏賊の一年ものの麹漬けはこの上ない味わいでした。

ただ、ちょっと気になったのは煮切りが強いこと。
ヅケや小鰭など、ものによってはネタに勝ってしまっている印象です。
これも個人の感じ方かもしれないですが。

ともかく、質も量も大いに満足させていただきました。