澤崎

五反田駅から少し歩いた落ち着いたエリアに佇む「澤崎」は、和の技と季節の食材を丁寧に掛け合わせた日本料理が楽しめる、本格割烹の一軒。店内は木を基調にした静謐な空間で、カウンターからは料理人の所作を間近に楽しむことができる。

この日は「おまかせコース」をいただいた。先付けは「うるいとホタルイカのお浸し」。春の訪れを感じさせる香りと柔らかな苦味、そして出汁の奥行きが絶妙なバランスで広がる。

続く椀物は「甘鯛の葛叩き」。透明感のある椀の中に、ふわりと浮かぶ甘鯛のやわらかさと上品な出汁。食べるたびにじんわりと心がほどけていくような一杯だった。

お造りは、熟成させた平政・本鮪・槍烏賊の三種。特に槍烏賊は塩と酢橘でいただき、その甘みと食感が印象深い。包丁の入れ方にも繊細な技が光る。

焼き物では「のどぐろの塩焼き」が登場。脂ののった身がふっくらと焼き上げられ、添えられた酢橘をひと搾りすると、その香ばしさが一層際立つ。

締めは「桜海老と筍の炊き込みご飯」。香りと旨味、そして季節感がしっかり感じられ、赤出汁と香の物で最後まで余韻を楽しめた。

「澤崎」は、料理、器、空間すべてに美意識が通っており、静かに料理と向き合える貴重な場所。季節を変えて、また訪れたくなる名店だった。大切な時間を過ごしたい夜に、ぜひ思い出したい一軒。