ブラームスは交響曲第4番の第三楽章でトライアングルを使っています。この楽器が登場するのは彼の全交響曲でもここだけです。
この楽器は、ただ打つだけなら簡単に音が出るので、学校や幼稚園でも使いますが、美しい音を出すこと、そして音量、特に弱音をコントロールするのがとても難しいです。
以前ホールでブラームスの第4番(演奏時間約40分)を聴いた時のこと。トライアングルにはしっかり専属担当の奏者がついていて、第一楽章、第二楽章と微動だにせず椅子に座っています。そして待ちに待った第三楽章でスッと立ち上がると、トライアングルを高く持ち上げ、澄み切った音でチリリリリン!と鳴り響かせました。
その後曲は陰鬱な終楽章へ。トライアングルの出番はあっという間に終わり、奏者はまた椅子に座って終曲まで動きません。交響曲約40分間の演奏時間、トライアングル奏者は第三楽章だけのほんのわずかの出番でした。しかしその美しい音は抜群のコントロールで研ぎ澄まされ、交響曲の陰影を浮き彫りにするのに最高の仕事をしました。
さて、レッスンでもよくトライアングルを使ってきれいな音を響かせる体験をします。ピアノも打楽器なので、きれいな音色を出すことを意識して何かをたたいたり、たたくイメージをしてみるのは、ピアノ演奏にとてもいい影響があります。

トライアングルの良いところは
① 打点が目に見えるので音の現れる瞬間が分かりやすいので感じやすい(ピアノは鍵盤ではなくピアノは内部につながっている見えにくいハンマーの先に打点がある)
② 手先指先だけでたたいてもコントロールしにくいことに気が付きやすい(肩や身体の方から伝えていかないといい音が出ないところがピアノと同じ)
③ 音を響かせるイメージが分かりやすい(いろんな向きに叩くことができるが、常に音が響いていく方向を感じられる)
④ 音の揺らぎが簡単に分かる(音を出した後トライアングルを振ったりあおいだりするとワンワンワンと周波数が変わる/ピアノでは不可能なビブラートができるので音は空気の振動だという理解が高まる)
小さな生徒さんはトライアングルを見るとうれしくてつい力いっぱいたたいてしまったり、ビーター(打つ棒)をカチャとトライアングルにくっつけてしまったりします。
また発音が点なので曲のリズムに合わせるのが難しいです。
ビーターを向こうに逃すようにして、身体を使いながら叩く角度を調節しているうちに、だんだんコツがつかめて上手にコントロールてできるようになります。そしてその感覚をピアノを弾く時にも活かしていきます。
