柿右衛門様式は、日本の磁器(有田焼)を代表する伝統的な陶磁器美術様式のひとつで、江戸時代初期の有田にて確立・発展した。主役は色絵磁器で、特に赤絵と染付、金彩を組み合わせた豊かな装飾が特徴。早くは17世紀前半の渡来技法を取り入れ、朝鮮と中国の技法を吸収しつつ独自の表現を磨いていった。
技法的特徴として、釉薬の重ねと発色の鮮やかさが挙げられる。赤絵は鈴形・花鳥・人物図などを唐草文と組み合わせ、深い赤色を出すための高温焼成と鉄釉の調整が重要だった。染付は藍色で描く線描と細かな描き込みで、景色・風物・歴史的人物を織り込み、画面の余白を活かす構図が多い。金彩は後補的な装飾として高貴さを付与し、屏風形や花瓶、皿などの大型作品にも応用された。形態は扇形、瓶、徳利、皿、香炉など多岐にわたり、実用器と美術的価値を両立させた。
社会と市場の影響を受け、江戸期には豪商の推進力で大量生産と輸出が進行した。オランダ・ポルトガル・中国などへの輸出窓口としての長崎・有田の役割が大きく、海外需要に対応するため図柄は時代の好みを反映しつつ、伝統的モチーフと新しいモチーフを混用する柔軟性を見せた。これにより、柿右衛門様式は全国的な磁器美術の潮流を形成し、日本磁器の高品位化に寄与した。
技術的な伝承は家祖の血統と工房内の技法書によって継承された。代表的な技術者としては、柿右衛門の名を冠した一族・工房の画匠たちが挙げられ、彼らは絵付の筆致・色の濃淡・金の表現法を体系化した。近代以降は西洋美術の影響も受けつつ、修正・保守・再解釈を経て現代まで継承される。現代の柿右衛門様式は、古典の精神を踏まえつつ現代的なデザインや素材の新規開発にも挑戦し、展覧会や美術館のコレクションにおいて高い評価を獲得している。
総括すると、柿右衛門様式は有田焼の象徴として、技法の多様性と華麗な装飾美、実用品と美術品を結ぶ橋渡しとしての役割を果たしてきた。色絵・染付・金彩の三要素を巧みに組み合わせ、江戸・明治の国内外市場での需要に応えつつ、日本磁器の高度な製作技術と表現力を世界に示した。現在も継承・革新が続く、日本伝統陶磁器の重要な系譜として位置づけられている。