ヘレンド(Herend)は、1849年にハンガリーのヴァーラシュリク(現ヘレンド)で創業された陶磁器ブランドである。創業者はマーティン・ヘレンドとラースロー・ボダーニーの二人。初期にはクラシックなファイアンス様式の大皿や壺を製作し、王侯貴族や教会の受注を得て評価を高めた。19世紀後半にはヨーロッパ宮廷の公式磁器として認定され、ヴィクトリア朝の英国市場を含む国際的な顧客を獲得。特に風景画・花鳥図・動植物モチーフの繊細な筆致と豊かな彩色、金彩の装飾が特徴的である。
ヘレンドの製品は主に磁器白磁に手描きの花柄と金彩を施す技法で知られる。代表的なシリーズには「ミローフラワー」「マムフラワー」「トリオ・オウム」などがあり、花柄は特にボタニカルな描写のリアリズムと雅やかな色調で評価される。製作過程では、型抜き成形と手描きの二段階を重視し、職人の手仕事によるハンドペイントの温かみを売りにしている。高級ラインは金彩の使用量や細部の筆致がさらに緻密になる。
ヘレンドは民族主義的なアイデンティティを背景として、ハンガリー文化の象徴的存在となった。クラシックな西洋磁器の伝統を継承しつつ、東欧らしい自然モチーフを組み合わせ、19世紀末から20世紀初頭のアール・デコ以前のスタイルの先駆としても評価される。絵柄は時代とともに変遷し、現代では伝統的花柄だけでなく、現代デザインのコラボレーションや限定シリーズも展開している。
現代のヘレンドは、テーブルウェアだけでなく、オーナメントや置物、花瓶など多様なアイテムを提供。創業地の伝統工芸を守りつつ、グローバル市場でのブランド価値を維持。国内外の美術館・博物館にもコレクションとして所蔵されることがあり、陶磁器愛好家の間でコレクション性が高い。歴史的には、王侯貴族の嗜好を支えた上品さと職人技の融合が、ヘレンドを世界的に認知させる原動力となっている。