「天涯孤独」とは、頼れる家族や親族がおらず、社会的に孤立した状態を指します。未婚化や少子化の進行により、このような状態で老後を迎える人が増加傾向にあります。これには、配偶者との死別や離婚、子どもとの疎遠、また物理的・心理的な距離による支援の不足など、様々な要因が含まれます。
天涯孤独な老後を迎える前に知っておくべきこと
歴史を紐解くと、江戸時代の隠居文化や、明治時代以降の核家族化の過程で、多くの高齢者が孤独な晩年を過ごした記録が残されています。たとえば、『養生訓』の著者である貝原益軒は、高齢期の過ごし方について「交わりを絶やさず、心を養うことが大切」と説いています。また、近代以降では、作家の林芙美子や与謝野晶子らが、女性の自立と老後の備えについて警鐘を鳴らしています。
厚生労働省の試算によると、夫婦世帯の場合、月々の生活費として約20〜30万円が必要とされています。単身世帯では、これよりも若干少なくなりますが、医療費や介護費用の増加を考慮する必要があります。とくに注意すべきは、予期せぬ出費への備えで、最低でも年間収入の3倍程度の貯蓄を目標とすることが推奨されています。
単身世帯の標準的な月間支出の目安:
・固定費(約12-15万円)
住居費:家賃または住宅ローン、管理費等 5-6万円
光熱費:電気、ガス、水道 2-3万円
通信費:携帯電話、インターネット 1-1.5万円
保険料:生命保険、医療保険等 2-3万円
その他:交通費、NHK受信料等 1-1.5万円
・変動費(約6-8万円)
食費:4-5万円
日用品費:1-1.5万円
娯楽・趣味:1-1.5万円
・予備費(約2-3万円)
医療費
突発的な出費
冠婚葬祭費
これに加えて、毎月3-5万円程度の貯蓄が望ましいとされています。
孤独な老後を防ぐためには、55歳前後からの人間関係の構築が不可欠です。具体的には、週1回以上の地域のコミュニティ活動(町内会の清掃活動や防災訓練など)への参加や、月2回程度の趣味のサークル(絵画教室や歌声サークルなど)、月1回以上のボランティア活動(図書館での読み聞かせや地域の見守り活動など)を通じて、年齢や性別を超えた多様な交流を持つことが重要です。
