高齢化が進む日本で、老後の経済的な問題は深刻さを増しています。65歳以上の単身世帯の平均貯蓄額は約1,900万円ですが、これは地域や生活スタイルによって大きく変動し、多くの方が老後の生活に不安を感じています。この記事では、遺品整理の現場から見えてきた老後の経済的課題と、その具体的な対策について解説します。
年金暮らしの実情と問題点
遺品整理の現場では、食費を切り詰めるため、賞味期限切れの缶詰や乾パンを食べ続けていた形跡や、光熱費を抑えるために真冬でも暖房を使わず毛布にくるまって過ごしていた痕跡、また医療費を節約するために受診を控えて症状が悪化していた記録などが見つかります。これらの現場からは、老後の経済的困窮の実態が浮かび上がってきます。多くの方が年金支給額の減少と物価上昇の狭間で苦しみ、生活が立ち行かなくなっているのです。
また、医療費や介護費用の増加も大きな要因となっており、とくに75歳以上の後期高齢者の医療費負担が重くのしかかっています。さらに、単身世帯の増加により、家族による支援を受けられない高齢者が増加している点も見逃せません。
例えば、ある70代の女性の遺品整理では、月額7万2000円の基礎年金のみの収入に対し、家賃4万5000円、光熱費1万8000円、食費2万円と、基本的な生活費だけで収入を超えてしまい、10年間で貯金1200万円を使い果たしていた通帳の記録が残されていました。年金受給額は平均で月額13万円ほどですが、実際には個人差が大きく、月額7万円程度の受給者も少なくありません。
とくに女性の場合、専業主婦だった方は基礎年金のみとなることが多く、夫の死後、突然の収入激減に直面するケースをよく目にします。光熱費や食費などの基本的な生活費だけでも年金では賄えず、貯金を切り崩して生活している方が非常に多いのが現状です。
驚くべきことに、現役時代は高収入だった方の遺品整理でも、経済的困窮の痕跡に遭遇することがあります。ある企業の元役員だった方のケースでは、退職金を投資で失った後、高額な生活水準を急激に落とすことができず、最終的に貯金を使い果たしてしまいました。
