スーパーコンピュータ京のその後
以前この欄で紹介した「スパコン京」は、長い間科学技術の発展に寄与してきましたが、その役割を終え、8月31日に電源をおとすことになりました。
京は2006年に日本の技術の粋を集めて開発が始まり、2011年に完成しました。1秒間に1京(1兆の1万倍)回の計算をこなすことから京と名付けらました。2009年の民主党政権下の事業仕分けで「2位ではダメなのか」と予算を一部削られたり、東日本大震災で部品の供給が止まりそうになったり、決して順調な開発ではありませんでしたが、その年のTOP500で世界一の計算力を獲得しました。本格稼働は2012年9月から大学や企業の研究所など多くの研究者に利用され、生命科学や防災、ものづくりなど幅広い分野で研究成果を生みました。
アメリカ、中国をはじめとする多くの国のスパコンが核分裂のシミュレーションなど軍事利用が主な目的に使用されていますが、京は民生専門に使用されました。
理化学研究所によると、延べ約1万1000人の研究者、200社以上の企業に利用されました。巨大地震の揺れと津波の関係や地殻の動きを同時に予測できるソフトウエアの開発や、台風の発生を高精度で予測する研究など防災研究の発展に大きく貢献しました。また、医療分野でも、心臓をコンピュータ上で再現し、病因の解明や手術方法の選択につなげる研究など多くの成果を出ました。その成果は約1300本の学術論文にまとめられているそうです。
本格稼働から7年。多くの成果を出した京ですが、年間約100億円という維持費が理由で運用停止後の再利用は難しく、撤去されることが決定しているそうです。
京の後継機は、2014年から理化学研究所と富士通が共同で開発を開始し、計算速度は現在の世界最速スパコン「サミット」の2倍超となる1秒間に約40京回を見込んでおります。シミュレーションでの性能は最大で京の100倍以上となる予定で「富岳」と命名され、令和3年にも運用を始める予定です。世界1位を奪還できる可能性も見えていますが、今後のスパコンは「ペタ級」の京から「エクサ級」が主流になると予測されており楽観はできない様です。
政府は富岳を用いて行う研究として、健康長寿社会の実現、防災、エネルギー問題などのシミュレーションの他、ビッグデータや人工知能など、重要性を増す分野での活用などを挙げています。
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