最後に
アナログとデジタルについて、身近な例を交え様々な角度から見てきましたが、この様な例を挙げると、アナログは古色蒼然たる古いもので懐古趣味のオタクが好きそう。デジタルは最新鋭の技術で洗練されたイメージがある。という様にとらえられてしまうかもしれません。しかし、純粋にデジタルの世界においてもアナログの技術が必要とされる世界があり、今では数少なくなってしまったアナログ技術者が非常に重宝されています。
コンピュータの論理回路はまさにデジタル回路の塊で、アナログ技術の入るスキはなさそうです。デジタル回路を動かす信号の波形が理想的な方形波であればデジタル回路は理論通りに動作します。しかし、実際の回路では、外部条件により方形波にオーバーシュートやアンダーシュート、リンギング、さらにはステップ波形などが重畳し、さまざまに変形してしまいます。かつて基本クロックが1MHzや10MHz程度で動作していた時代は、その様な乱れがあっても安定した部分を使っていたので、それほど気にしなくてもよかったのですが、100MHzや1GHZ以上の高速になると、安定する前に次の乱れが発生してしまい、影響が無視できなくなります。 その結果、電線を通る信号の僅かの遅れや進みが発生したり、本来無視すべき信号を捉えてしまったりして誤動作に繋がります。
この原因の一つが、電線の端で反射して帰って来る反射波です。元々の信号と反射波が干渉して波形の乱れを発生します。この様な動作を解析して論理回路を正しく動作させるのが、アナログ技術者です。さらに厄介なことは、正しく動作させるための手法が一様では無く、発生する現象に応じて処置が異なるので高度な技術が要求されます。必要とされる技術は、ブール代数などの論理式ではなく、電子回路理論や電気磁気学、周波数解析など多岐にわたるため、優秀なアナログ技術者は非常に少なく貴重な存在となっています。
左図は、Xより出力された信号が反射波によってオーバーシュートが発生し、論理回路の出力に誤った信号(Y)が出力される様子です。クロックが高速の場合、この誤った出力を捉えてしまう場合があります。アナログ技術者はこの反射波を如何にして小さくするか。あるいは進行波と反射波が干渉した際に、オーバーシュートを小さくするための施策などを行い、論理回路が正しく動作するようにします。
