スーパーコンピュータ京 最終回(次世代スパコン京)
コンピュータ雑感 第一回において、次世代スパコン京の心臓部である、中央処理装置(CPU)の開発に成功したというニュースを紹介しました。試作チップ完成の発表が2018年6月21日なので、今頃は基本設計を終えて、システムに組み込んでの評価などが行われているものと思います。
現行の京のCPUは富士通が独自に開発したSPARCを採用していますが、今回は汎用CPUであるArmを基本に独自開発したようです。
ではなぜArmにすると性能が上がるのでしょうか。専門的にはかなり難しい議論があるようですが、計算ノードを48個内臓(現行京は4個)したり、ノード間の通信を富士通が開発したTofu(Torus fusion)で効率良く接続したりするなど対策を入れて、性能面で優位に立てる見込みが得られたそうです。また、現行京が優れている点として、メモリバンド幅(メモリとプロセッサ間のデータ伝送速度)が非常に大きく設計されていますが、その点も踏襲しています。科学技術計算のアプリケーションの実行演算性能はメモリバンド幅が大きいほど上がるので理にかなった設計と言えます。
この次世代京が完成すると、幅広いアプリケーションが実行できる世界最高水準のスパコンが誕生し、現在16位に甘んじているTOP500でも再び世界一に返り咲く可能性があります。この膨大な計算力を、超高速で実行するシミュレーションに生かして、科学技術はもとより様々な課題解決に役立ってくれることと思います。
一例をあげると、自動車の設計では、車体の構造や機能、エンジンの性能など、個別に実験を重ねながらデータを積み上げて行っていました。それを計算機上にデータを入力して圧倒的な処理能力を使って統合的にシミュレーションを行い、性能、安全性に優れた車を効率良く設計できます。
また、脳の複雑な機能をスパコン上に展開してシミュレーションすることにより、より高度な人工知能の開発が出来、アトムの様な自律的に行動するロボットを作り出せる可能性を秘めています。
さらに、膨大な気象データを瞬時に解析出来れば、現在のスパコンでは難しいとされる、ゲリラ豪雨、竜巻の発生など局地的な気象を高精度に予測出来る様になると期待されています。
カテゴリー別
日付別
概要
住所
宮城県仙台市青葉区中央3丁目8−5新仙台駅前ビル328