スーパーコンピュータ京 その3(スパコン京の知られざる実力2)
Graph500は実社会にて現れる、不定期な大量データを解析する際に使用されるグラフ解析の性能を競います。例えば、地震の際に発生する津波の解析や、脳神経科学における神経機能の解析、都心部における交通渋滞の発生メカニズムなど、大規模で複雑なデータ処理が必要となるビッグデータの解析に必要とされる性能です。つまり、アルゴリズムやプログラミングを含めた総合的な能力が求められます。
HPCGは共役勾配法と呼ばれる、産業利用など実際のアプリケーションで現れる計算手法を用いて、スパコンをより多くの視点から性能評価を行います。TOP500で上位にランクされているスパコンを制して、HPCGで世界一の座についたのは、演算性能のみならず、CPUとメモリ間のアクセスやCPU相互のネットワークのデータ授受の手法など、システム全体としてバランス良く設計されているためです。
直感的に分かりやすい例として、F1レースを例に比較してみます。
TOP500の様に単純な計算を繰り返す性能は、エンジンの大きさに相当します。最大出力を出せる巨大なエンジン。その出力に耐え得る頑強なシャーシーやボディ。さらに強靭なタイヤを持ち、スタートから真っすぐな直線道路をフルスロットルで走り抜ける。その様なレースで京はアメリカをはじめ中国等のスパコンに追い越されました。
しかし、鈴鹿サーキットの様な曲がりくねったコースでは、スピードも要求されますが、コーナーを、如何にスピードを緩めずに走り抜けるか、車の性能と高度なドライブテクニックの両方が要求されます。
Graph500やHPCGで世界一を続けているスパコン京は、計算スピードだけではなく、大規模かつ複雑なデータ処理や、産業利用などの実際のアプリケーションを効率良く処理できるバランスの取れたスパコンであることが証明された訳です。
スパコンが得意とする分野は「コンピュータシミュレーション」です。高い計算処理能力により、大規模で高度な計算を短時間で実行します。地球規模の気候変動の解析や、核分裂の推移の状態確認など、「規模が大きすぎ」「危険すぎて実験出来ない」と言った現実の世界では実施出来ない現象をコンピュータ上に再現できます。「スパコン京」が活躍する場面は今後も沢山ありそうです。
