パソコンと出会う前
私が、会社に入社したのは1977年です。当時、大型電子計算機(コンピュータ)は有ったものの、個人が専用に扱う小型の計算機は有りませんでした。コンピュータの設計はまさに紙と鉛筆で論理回路を組んでいくという方法で行われました。
しかも今日では当たり前になっているLSI等は無く、汎用のゲート(NANDやNOT、FFなど)が有りました。共通で使う回路モジュール等も無いので、汎用ゲートを組み合わせて制御回路やレジスター等を作っていました。汎用ゲートに無いものはトランジスタを組み合わせて作るという様に全部個人のスキルに任された手作り回路でした。
当然、なかなか思ったように動いてくれません。「8ビットカウンターを作る」等は新入社員に与えられる腕試し問題でした。トランジスタでNANDを作り、NANDを組み合わせてFFを作り、それを組み合わせて1ビットずつ桁が繰り上がるカウンターを作っていきました。それを8回繰り返してようやく8ビットカウンターが完成するのですが、途中で何ビットまで作ったか分からなくなってしまったり、単調な繰り返し作業に飽きてきたり、不完全なFFが途中にあったりで、何とか試作段階に持っていくのに1ヶ月近くかかりました。やっと完成したかと思って実験室で動作確認すると、1ビット不足していたという様なことはしょっちゅうでした。そうなると、再び事務所に戻り図面と格闘が始まります。
今時、単機能のカウンターのICを見つけるのは至難の業かもしれません。秋葉原のジャンクショップに行けば、もしかしたらまだあるかもしれません。今ではカウンターが複数個入っていて演算回路が付いている様な複合機能のMSIでも100円程度で買えるのではないかと思います。でも、苦労を重ね自作したカウンターが動いたときは本当に感動した覚えがあります。また、自作の回路にも愛着が沸いてきました。
この様な時期が5年ほど続き、事務所にワープロが導入されました。しかし、部に1台しか配備されなかったので、予約表に使用日時を記入して順番に使用するといった具合でしたので、基本的には紙の時代がさらに数年続きました。
