橈骨神経麻痺、尺骨神経麻痺、正中神経麻痺は、それぞれ異なる神経が障害されることで生じる神経麻痺で、特定の運動障害や感覚障害を引き起こします。以下にそれぞれの概要を説明します。
1. 橈骨神経麻痺
概要
橈骨神経は上腕の後方から前腕、手に至る神経で、主に腕や手の伸筋群を支配します。
原因
外傷: 上腕骨骨折や肘の脱臼。
圧迫: 「土曜日の夜麻痺」と呼ばれる、長時間腕を圧迫した状態での神経障害。
病的原因: 糖尿病や神経炎。
症状
運動障害:
手首や指を伸ばせない(下垂手: 手首が下がった状態)。
前腕の回外(手のひらを上に向ける動き)の制限。
感覚障害:
手の甲(親指側)の感覚低下。
治療
保存療法(安静、スプリント装着)。
理学療法やリハビリ。
重症例では手術が必要。
2. 尺骨神経麻痺
概要
尺骨神経は、肘の内側を通り、小指側の手の筋肉や感覚を支配します。
原因
外傷: 肘の骨折や打撲。
慢性的な圧迫: 尺骨神経管(肘部管症候群)。
神経炎: 糖尿病性神経障害など。
症状
運動障害:
小指側の手の筋力低下(つまむ、握る力が弱くなる)。
「鉤爪手」: 小指と薬指の過伸展と屈曲。
感覚障害:
小指と薬指の感覚低下やしびれ。
筋萎縮:
小指側の手の筋肉が痩せる。
治療
保存療法(肘の圧迫回避、サポーター装着)。
理学療法。
外科的治療(神経の圧迫解除)。
3. 正中神経麻痺
概要
正中神経は、前腕の屈筋群と母指球筋を支配し、手の親指側の感覚を担当します。
原因
外傷: 前腕や手首の骨折。
圧迫: 手根管症候群(手首での正中神経の圧迫)。
炎症: 腱鞘炎や腫瘍。
症状
運動障害:
親指の対立運動ができない(「猿手」)。
手指の屈曲障害(特に親指、人差し指、中指)。
感覚障害:
手のひらの親指側(親指~薬指の一部)の感覚低下やしびれ。
疼痛:
神経の圧迫部位での痛み。
治療
保存療法(スプリント、消炎鎮痛薬)。
理学療法やリハビリ。
外科的治療(手根管開放術など)。
