ペガサス乗馬クラブ

山裾にあった、いまはもう廃業してしまった
鎌倉乗馬倶楽部の会員だった娘時代
預託馬に歌手の尾崎紀世彦の持ち馬「バロン号」がいた。
彼には会ったことはなかったが
弟さんらとよく馬場で騎乗した思いでもある。

また、早朝に七里ヶ浜まで
鎌倉の山を越え（現在は住宅地）
江ノ電の線路を越えて遠乗りに出かけたことがあった。

馬術大会にも参加し
御殿場や清里まで乗馬に出かけたものだった。

とにかく馬が好きなのだが
「競馬」をやる人を軽蔑している。
馬を賭けの対象にする品性の低さが嫌いだから。

ある日、ツレと出かけたとき偶然この乗馬倶楽部に出会った。
いてもたってもいられず、立ち寄ってみた。
懐かしい屎尿の匂いと馬の体臭がまず鼻をつき
なんだか涙が出てくるような気分に。

障害用の柵も揃っている広い馬場
馬の手入れをする洗い場では
無口をつけられた馬が、手入れを受けている
思わず駆け寄って
かつてそうしていたように馬体にブラシを掛けたくなる光景。

大事に飼育されているのがひと目でわかる清潔な厩舎。
たちまちかつて可愛がっていた「月勝号」の
わたしが呼びかけると狭い厩舎の中で
大きな馬体をまわして
馬栓棒から顔を突きだし嘶いた姿が蘇ってくる。

馬の手入れも充分で
どの馬も毛並みが光を弾くほど艶めいているも好もしい。

馬場のそばの
天井の高い木を多く使ったクラブハウスも
とってもお洒落で、お茶をするだけでも満足できる雰囲気。

一度騎乗に出かけた代々木乗馬倶楽部のクラブハウスは
会員でない者へ向ける独特の高飛車な視線があったが
ここにはそれもなく
かなりオープンで気楽な空気に満ちていて
しばし感傷と感動と感激に身を浸せる場所だった。