しかるに最近の子どもたちを見ていると、「結果」を得ることにばかり気持ちが向いていて、文章を読むことに集中することができないのではないかと受けとめられます。また教師の話を聞かず、勝手にどんどんテキストの問題を解いて行く子も散見されます。もちろん言問学舎では、そうした行動は見過ごさず、「話を聞かない」ことにどれほど大きな損失があるか、語り聞かせます。しかしいずれにせよ、結果を求めることばかりが重視される社会のありようが、子どもたちの勉強にも投影されているのではないかと考えないわけに行きません。「00」年代後半から、私は「デジタル」的なものが生活の各場面をひたしていることが国語力低下の一因ではないかと述べて来ましたが、「結果を求める」社会の実情もあわせて考慮すべきであろうということを、近ごろでは強く考えるようになりました。
言問学舎でも、昨年以来Zoomを利用したオンライン授業をすすめています。日々改良を加えておりますが、やはりデジタル環境を介した接触では、「結果直結」の側に寄って行く傾向が強いように思われます。ただその点を否定、回避ばかりするわけにも行きませんから、ほかにYouTubeを活用して、生徒が読むのに苦労するような文章を、動画の音読併用で読ませる取り組みも導入しております。YouTube導入の代表例は、森鷗外の『舞姫』です。原文を動画で音読して聞かせた上で、言問学舎舎主小田原漂情のオリジナルの全文現代語訳と読解ポイントのまとめシートに取り組ませる形で、2020年の5月から6月にかけて、当時の高校3年生、2年生に授業として提供しました。
その結果、2020年度の高校3年生の過半数は、当初こちらが企図していた、「『舞姫』をきちんと教えれば、小説も評論もしっかり読み解けるようになる」とのねらい通り、大学受験過去問演習(センター試験過去問や私立大学国語の読解問題)の論説文においても、それ以前とは異なる得点力を示してくれました。国立大理系受験者が共通テストの国語の得点を決め手にして合格した例もあります(宇都宮大学農学部)。またその時の高校2年生たちは、いま3年生になって、『舞姫』の作品世界をなつかしみ、積極的に学校の授業に取り組んでくれています。
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