高校2年生の方たちの中で、中島敦の「山月記」を中間テスト、または期末テストの範囲として勉強しておられる方がいらっしゃると思います。一読して、「むずかしい文章だ」と感じた方も、多いのではないでしょうか。それもそのはず、「漢文訓読調の文章」などと紹介されていることもありますが、もともと中国の唐の時代の「人虎伝」という小説を下敷きにした作品なのです。比較的多くの部分で原文の内容、記述を生かした文章ですから、むずかしい言葉が多く、現在の高校生の方たちが「わかりにくい」と思うのも、無理はないと言えます(ちなみに中島敦その人は、漢文を研究している家の生まれで、幼少時から漢文に深く親しんでいた人でもあります)。
しかし、漢文をもとにしている一部の難解な語句さえわかれば、文章自体は非常にわかりやすい、すぐれた文章です。「むずかしそう」という第一印象にとらわれず、まずは「山月記」の文章に親しむことからはじめてください。真の国語を教える言問学舎として、現在の高校生をはじめとする若年世代の方々がこのすばらしい「山月記」の文章に親しむことができるよう、全文を音読して、このほどYouTube上で公開しました。
スーパー読解『山月記』本文音読動画.jpeg
全文通しだと23分もの長さとなるため、文章の内容にあわせて、動画(音読)を以下の通り6分割してあります。
第1回 隴西の李徴は博学才頴・・・
第2回 翌年、観察御史、陳郡の袁傪という者・・・
第3回 今から一年程前、自分が旅に出て・・・
第4回 袁傪はじめ一行は、息をのんで・・・
第5回 時に、残月、光冷やかに・・・
第6回 漸く四辺の暗さが薄らいで・・・
※YouTube言問学舎(検索)のほか、言問学舎ホームページからも飛べます。
第3回について、視聴者の方からこんなお言葉をいただいております。
<小田原さんの声、速度、抑揚、とっても良くて、数分の間に、虎になっていく“人の心”が、静かに強く響きました。>
真の国語を教える言問学舎では、古文・漢文を含めて、「国語の勉強では音読が重要」ということを基本方針としております。その意味から言えば、動画をご覧になって作品に親しみを感じていただけたら、ぜひご自分でも、「山月記」の文章を音読してみてほしいと思います。

何よりも、音読にあわせて(動画で聴くだけでもいいです)文章を味わい、その世界にとけこむことで、内容の理解がぐっと深まります。この動画は、あとでご紹介する本のためのものでもありますが、まずは高校生のみなさんに「山月記」を十分味わい、読みこんでいただくことを最大の目的として、公開するものです。
文学作品の解釈というものは、よく理解している人には楽しいものですが、慣れていない人、苦手な人には、むずかしいものですよね。しかし、難解な、どこからそんな答えが出てくるのだろうというようなむずかしい「解釈」ばかりでなく、作品中のいろいろなところにちりばめられている「手がかり」から、自分が感じ、考えたことを書き出していき、それをまとめることで自分なりの「解釈」ができあがります。その繰り返しによって、読み解く力がついていくものですし、それが国語力、思考力を大きく伸ばす第一歩になるのです。
言問学舎では、その段階を踏んで「真の国語」の力を身につけていただくために、一昨年『スーパー読解「舞姫」』を出版しました。これまでにその本でみっちり勉強した言問学舎の塾生たちは(みなすでに大学生です)、大学入試の論説文の読解問題を解く時も迷わずに(ほぼ)正解を見つけられる「得点力」も、しっかり身につけました。「山月記」も「舞姫」に負けず劣らず、未知の世界の物語の展開を読みとる醍醐味にあふれ、読み解くことで深い洞察力を身につけることのできる作品です。
より深く「山月記」を勉強したい方のために、「スーパー読解」シリーズ第2弾、『スーパー読解「山月記」』を、6月中旬に発売致します。いましばらくお待ちください。
