凡

中野の路地裏に佇む「凡」。
控えめな暖簾と、質素な外観に、
日本料理の本質を感じます。
店内は、無駄な装飾を削ぎ落とした空間。
カウンターに座ると、大将の静かな佇まいに、
心が自然と落ち着いていきます。
おまかせコースをお願いすると、
まず運ばれてきたのは蕗の薹の白和え。
素材本来の味わいを引き出した一品。
お造りは、真鯛と平政の二種。
シンプルな盛り付けながら、
魚の鮮度と確かな目利きが光ります。
煮物椀は、筍と若芽。
余計な味付けを省いた澄んだ出汁に、
素材それぞれの個性が際立ちます。
焼き物は、ぐじの塩焼き。
塩だけのシンプルな味付けで、
魚本来の旨みを引き出しています。
炊き合わせも素材を活かした仕上がり。
里芋、人参、いんげんと、
どれも本来の味わいが生きています。
小鉢の数々も実に丁寧。
おかか和えや浅漬けなど、
一見飾り気のない品々が、確かな技を感じさせます。
お食事は、筍の炊き込みご飯。
ほんの少しの調味料で、
竹の子の香りと甘みを引き出しています。
器も質素ながら、確かな味わいを感じる品々。
料理との取り合わせも、
余計な主張を感じさせません。
大将との会話も必要最小限。
でもその言葉の一つ一つに、
料理への真摯な想いが伝わってきます。
一見飾り気のない料理の数々に、
日本料理の奥深さを感じる、
そんな特別な時間でした。
また季節の移ろいを感じに、
訪れたいと思います。
心からのごちそうさまでした。