美登里

中野の路地裏に佇む「美登里」。
暖簾をくぐると、こんがりと焼き上がる
鰻の香ばしい香りが漂ってきます。
カウンター席に座ると、ガラス越しに
職人の丁寧な手さばきが見えます。
包丁さばきから炭火の扱いまで、
何十年もの経験が感じられる所作です。
まずは「特上うな重」を注文。
待っている間にも、炭火で焼き上げる
パチパチという音が心地よく響きます。
運ばれてきた重箱の蓋を開けた瞬間、
ツヤのある焼き色と共に立ち上る香りに、
思わずため息が漏れます。
たっぷりとかかった特製のタレは、
甘みと醤油の風味のバランスが絶妙。
何代も受け継がれてきた秘伝の味です。
身は分厚くふっくらと焼き上げられ、
口に運ぶと、まるでバターのように溶けていく食感。
脂の乗りと火入れ加減が絶妙です。
山椒は程よい量で振りかけられ、
タレの甘みと脂の旨みを
引き立てる絶妙なアクセントに。
付け合わせの肝吸いも逸品。
肝のコクと出汁の優しい味わいが、
鰻の美味しさを一層引き立てます。
香の物は自家製の沢庵と茄子の浅漬け。
さっぱりとした味わいが、
鰻の贅沢な味わいに休息を与えてくれます。
ご飯は一粒一粒が立っていて、
タレが染み込みながらも、
しっかりとした食感を保っています。
大将の真摯な仕事ぶりからは、
鰻への敬意と、伝統を守り続ける
強い意志が感じられます。
カウンターには常連さんの姿も多く、
皆さん満足そうな表情で
大将との会話を楽しんでいます。
伝統の味を守りながらも、
決して高すぎない価格設定で、
特別な日の食事として親しまれています。
心からのごちそうさまでした。
また季節の移ろいと共に、
この極上の味わいを楽しみに来たいと思います。