湯沼天然水晶洞

　自然派の方にお勧めの宿。個人経営の山の中の宿としては、敷地も大変に広く、見学できる見事な水晶洞あり、水芭蕉の群落が自生する湿地や林あり、小川流れる裏山あり、天然記念物「川上犬」の犬舎ありと内容豊かで、周辺に出かけなくてもここだけでも十分楽しむことができる。鉱物マニアの方や釣りの方には有名な宿で、夕食後は宿泊客の鉱物談義・釣り談義が楽しい。小学生づれのファミリーにも環境的にはお勧め。アスレチックなど人工の遊具は一切ないが、自然のおもしろさや不思議さやすばらしさを、多様な内容から味わうことができ、ちょっとした山歩きもできる。初夏や秋は林や湿地の植物が美しい。
　宿では天然記念物「川上犬」を何匹も飼っている。大きめの柴犬位の大きさの日本犬で、戦前は狩りに使われていた歴史があるらしいが、今は頭数が減り、保護犬として、川上村の中の数軒で飼育されているらしい。この宿の川上犬の数匹は放してあり、出迎え役をしているようだ。人なつこくかわいい。しかし、ペット同伴の方は互いに吠えてしまうので要注意。犬舎にも何頭かいるので、早朝、川上犬の遠吠えしあう声で目がさめた。

　宿の施設は昔の民宿レベルで、都会派の感覚ではないので、シティー派の方は要注意。個室をもらえるが、トイレ、洗面所、風呂は、各部屋にはついていない。みな共同である。
　鉱泉を使っている風呂は社長の手作りなのかスケールが大きい。ここの敷地で水晶を掘っていて出たらしい石英や方解石や水晶の巨岩を並べ壁にした風呂場で、水晶洞窟で風呂に入っているような感がする。ただ広すぎて冬は湯船に入っていないと凍えそうに寒い。なにせここの地域は冬は雪も多く氷点下が当たり前の地域なのだ。

　食事は、山の宿としては良い方だと思う。量も多く品数もある。山菜やキノコなど季節によって地物を提供してくれるし、鍋や焼き物なども、この地域の味を楽しめる。時には宿の方が採ってきたキノコなども提供される。

　なんと言ってもここの名物というか　お勧めは、社長が長い年月かかって敷地内の山を掘り抜いて作った「水晶洞」である。水晶だけではなく、他の鉱物も沢山あるが、大きさも美しさも一級品が解説付きで整理され、かつ、その洞窟から発見された状態で展示されている。近くの他の場所から採集されたものもあるが、それは解説もあり、天然の鉱物博物館といった感じである。学術的にも価値は大変に高いと思う。宿泊客は無料で見学できる。

川上村のバス通りからは外れた所にあり、送迎もないので、マイカーでないとなかなか行きにくい。ただ「湯沼鉱泉　天然水晶洞」と書いた案内が、県道や村道のいくつかのポイントに出ているので、わかりやすい。