権利は、裁判所での正式に手続を経て実現できるものです。
権利があっても、それを正式な手続きを経ずに実現させることは、相手方の同意がない限り違法になる可能性があります。
このような裁判所での手続(判決)や合意に基づかず、当事者が権利を実現する行為のことを自力執行といいます。
一見すると迅速な解決策のように思えるかもしれません。
しかし、自力執行は日本では原則的に禁止されており、多くのリスクが伴います。
自力執行を考える場合、様々な状況が考えられます。
一般的には、裁判手続を待てない、相手方が協力的でないケースです。
例えば、賃貸人が、賃借人からの賃料の未払いに対して、法的な手続きをとらずに、賃借人を立ち退かせる行為が自力執行の一例です(※1)。
また、貸した自己の所有物を、賃貸借期間が満了後、借主に無断で取り返す行為が自力執行です(※2)。
一般的には、強制執行が必要な場合は、裁判所を通じた手続きが求められます。
自力執行、自力での権利実現は違法になる可能性が高いです。
自力執行は、非常に例外的な場合にしか適法と認められないので、リスクが大きいですので、注意が必要です。
また、法律上、自力執行が一部認められる場合でも、その「範囲」を超えないことが重要です。
過剰な行動によっては、自己の正当性が失われ、かえって損害賠償を請求されることもあり得ます。
特に感情的な判断から行動に移すことは、後々大きなトラブルの要因となる場合があります。
自力執行に関しては、法律専門家との相談も有効です。
自分の抱える問題に対して、法的にどのような手続きが適切か、また自力執行が許容される範囲はどうか、といった点を確認しておくことで、より安全に権利を行使できるでしょう。
したがって、自力執行を行うことを検討する際は、その行為の正当性とリスクをしっかりと理解し、冷静な判断を下すことが重要です。
俯瞰的視点から、最適な解決策を見つけるために、常に慎重に行動することを心掛けましょう。
※1 クライアントに間違った助言をしたとして懲戒処分を受けている例が散見される場面です。
※2 所有者が、占有者から自動車を無断で引き揚げた行為が、刑法上の窃盗罪に当たるとして有罪判決を受けた例もあります。

自力執行に関連するリスクは多様です。
例えば、ある所有者が自力で他人の占有物を取り返そうとした場合、窃盗罪が適用されることもあります。
次に、労働契約においては、雇用主が自力執行を試みるケースも考えられます。
例えば、従業員が退職した際に、業務用の機器やデータを自力で取り返そうとするケースです。
この場合、様々な重大な問題があります。どのような問題があるか、その問題に備えて貸し出す際に結ぶべき契約は何か、皆さまも考えてみてください。
返却の合意をとるだけでは不十分(裁判と強制執行が必要)なのは明らかでしょう。
また、婚姻関係においても、親権を巡るトラブルが自力執行に発展することがあります。
例えば、別居中の親が子供を連れ去ろうとした場合、もう一方の親がこれを阻止しようとすることがあるため、法的な問題が生じやすいです。
これらのケースからもわかるように、自力執行には非常に高いリスクが伴います。通常は、法的手続きを経て権利を主張することが求められます。
自力執行を避けるための法的手段として、まず考えられるのは「強制執行」です。
これは、裁判所に申し立てを行い、法的に認められた執行手段を利用する方法です。
強制執行は、判決や仮処分に基づくものであり、法的根拠があるため、違法とはなりません。
次に「調停や仲裁」を利用する手段も有効です。
これらは、第三者を介入させることで、当事者間の争いを解決します。
調停の場合、合意が得られた場合には、法的効力を持つこともあります。
仲裁も同様であり、裁判所に持ち込むことなく円滑に問題を解決することが可能です。
最後に、特に意識しておきたいのが「リスクの評価と事前対策」です。
契約におけるリスクを洗い出し、権利行使(執行)が必要になる可能性を分析することで、事前に対策を講じることができます。
リスク管理を徹底することで、安心して取引を進めることができるのです。
債務者が約束を守らない場合、感情的になって、自己の権利を自力で実現しようとしてしまうと、お金であれば窃盗罪、脅しがあれば強要罪や恐喝罪などで刑事告訴されてしまうリスクもあるので、ご注意ください。
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