心ほどける一椀一皿「成光亭」で味わう、静謐な和の夜
この日は、根津の「成光亭」で会席料理をいただきました。階段を降りた先に広がる落ち着いた空間は、まるで別世界。こぢんまりとした木のぬくもりあふれる店内に心がほっとして、ゆっくりとした時間が流れはじめます。
前菜には、蕗と筍の炊き合わせ。ほのかな苦味と出汁の香りが相まって、春の息吹を感じさせてくれました。やわらかく炊かれた筍に、ふんわりとした木の芽の香り。丁寧な手仕事が感じられる、小さな感動の一皿でした。
お造りは中トロ、鯛、季節の白身。中トロはとろけるような脂の甘みが心地よく、鯛は引き締まった身に淡い甘みがじんわり。白身魚は口の中でほどけるような優しさがあり、どれも繊細で、素材の良さがそのまま伝わるような盛り合わせでした。
焼き物には、鰆の塩焼き。皮目はカリッと焼かれ、身はふっくらジューシー。ほんのり塩が効いていて、ひと口ごとに旨味が口の中に広がり、レモンを添えるとまた違った表情に。素材と火入れの絶妙なバランスに、ただただうなずくばかり。
煮物は、根菜の炊き合わせ。人参、大根、里芋がそれぞれちょうどよい柔らかさで、出汁の旨味をしっかり含んでいます。一つ一つの素材が持ち味をしっかり活かされていて、どこか懐かしく、心がほどけていくような味わいでした。
天ぷらは、海老と季節野菜。衣は薄く軽やかで、素材の味を邪魔せず引き立てる仕上がり。天つゆもあっさりとしていて、油の重さをまったく感じさせません。揚げたての海老のぷりぷり感と、甘みを含んだかぼちゃのコントラストが印象的でした。
最後は茶そば。つるっとした喉越しと、ほんのり香るお茶の風味が心地よく、出汁の旨味とともに静かに口の中を整えてくれるようでした。まるで食事の幕引きにふさわしい、静かで清々しい一杯。
「成光亭」の料理は、どれも押し付けがましさのない優しさに満ちていて、一品ごとに心が満たされていくような感覚。食べ終えた後に、ふと深呼吸したくなるような、そんな静かな余韻が残りました。まさに、丁寧に生きた料理との対話。静かな夜に、そっと寄り添ってくれる一軒です。
- 根津駅
- 日本料理
まるで料亭の余韻「浅野」でいただく、ほろり和食ランチの幸せ時間
湯島・末広町の路地裏に佇む「浅野」で、お昼の割烹定食をゆったりと楽しみました。初夏の陽射しさす昼下がりに、小さなカウンターに案内されると、時間がゆっくり流れるような落ち着いた空気感にすっかり癒されます。
まず登場したのは焼き魚定食。ホッケは皮が香ばしくパリッと焼き上がり、身はふっくらと肉厚。噛むたびにほろっと崩れ、噛みしめるとじゅわりと旨味と脂がにじみ出し、「これぞ家庭の焼き魚」が丁寧に進化した美味しさでした。
次に出されたお惣菜は肉じゃがと煮豆、小鉢がいくつか。肉じゃがのじゃがいもはほこほこで、出汁が染みた牛肉との相性が絶妙。口に含むと、ほろ甘い出汁のコクがじんわり広がり、自然と顔が緩みます。煮豆は豆の甘さをしっかり引き出しつつ、煮崩れせずに形を守り、丁寧な仕事ぶりを感じさせました。
さらに登場したのは炊き込みご飯。山菜と鶏のおだしがご飯にしっかり染み込んでいて、一粒ごとに食材の香りがふわり。軽い塩気と旨味のバランスが素晴らしく、白米との違いに思わず夢中で箸が進みました。
お味噌汁もまた絶品。香り高く、キノコや豆腐が入っていて、口に運ぶたびにほっとする優しさ。全体の味の調和が美しく、主役から小鉢に至るまで、一品も欠けることなく丁寧に添えられていました。
「浅野」のランチは、シンプルな家庭料理に料亭の気配りと技が光る一膳。静かに、でもしっかりとお腹も心も満たされる、“和の安心”が深く染み込むお昼ごはんでした。また帰り道にふと立ち寄りたくなる、そんな小さな贅沢を与えてくれるお店です。
- 千駄木駅
- 日本料理
やさしさが染みる和のひと皿「百点」で味わう、静かな夜のしじま
春日の路地裏、ひっそりと佇む「百点」は、知る人ぞ知る和食の名店。扉を開けると、カウンター席だけの静かな空間が広がり、ご主人がひとり丁寧に料理を仕上げる様子に、自然と心が落ち着いていきます。
この日はまず、白菜と塩昆布の浅漬けから。シャキシャキとした歯ざわりに、塩昆布の旨味がほんのり絡み、ひと口目からやさしい気持ちに包まれるような味わいでした。こういう何気ない一皿でお店の丁寧さが伝わってきます。
続いては、旬の刺身三種。鯛は身が引き締まっていながらも、噛むほどにやわらかく淡い甘みがにじみ出て、イカはもっちりとした食感が心地よく、まろやかな旨味が広がります。鮪の赤身はしっかりとしたコクとしっとりした舌触りで、どれも素材の持ち味を大切にしているのが伝わってきました。
焼き茄子の出汁ジュレがけは、香ばしく焼かれた茄子のとろけるような食感に、涼やかな出汁のジュレが絡み、口に入れた瞬間、ひんやりとした旨みが静かに広がります。季節を感じる、繊細で美しいひと皿でした。
次にいただいたのは、鰆の西京焼き。香ばしく焼かれた表面と、しっとりと脂ののった中の身。その対比がたまらなく、味噌のほのかな甘みが鰆の風味をやさしく引き立ててくれます。ご飯が欲しくなるほどの香りと旨さ。
締めには、おじや風の雑炊を。お米が出汁をしっかり吸い込んでいて、とろりとした食感の中に、昆布や鰹の深い旨味がじんわりと染み込んでいます。冷えた体にすっと染みわたり、心までほぐれていくような味でした。
「百点」は、派手な演出こそないけれど、ひとつひとつの料理にまっすぐな思いと手仕事の丁寧さが宿っているお店。静かに、ゆっくりと食事を楽しみたい夜にぴったりの、まさに心がほどける和の時間でした。
- 春日駅(東京)
- 日本料理
湯島の隠れ家「鬼樽」で味わう、季節を映す小料理の調べ
静かな湯島の夜、看板も控えめな「鬼樽」にふらりとお邪魔しました。階段を上がると、こぢんまりとしたカウンターだけの空間。初めてでもどこか懐かしいような、肩の力がふっと抜ける居心地の良さがありました。
まず出されたのは、菜の花の酢味噌和え。春を感じる一皿で、やわらかく茹でられた菜の花のほろ苦さと、やさしい甘みの酢味噌が絶妙に絡み合って、口の中にふんわりと季節の香りが広がります。ひと口目から「今日ここに来てよかった」と感じさせてくれました。
お造りは中トロ、ひらめ、ホタルイカ。中トロは脂がほどよく、舌の上でとろけるよう。ひらめはしっとりした舌ざわりに、淡い甘みがそっと寄り添うようで、ホタルイカは春の海を感じさせる濃い旨味と食感が口いっぱいに広がり、日本酒が進むこと間違いなしの盛り合わせでした。
次にいただいたキンキの煮付けは、骨の周りまでとろっと脂がのっていて、身はやわらかく甘辛い出汁がしっかり染み込んでいます。煮詰めすぎていない絶妙な味加減で、濃厚ながらも品があり、ひとくちごとに幸せが広がるような、そんな煮魚でした。
そして、和牛の一口ステーキ。小ぶりながらも一噛みで脂の甘みと肉の旨味がじゅわっと広がり、香ばしさと柔らかさのバランスが絶妙。見た目は控えめなのに、記憶に残る存在感のある一品です。
途中でいただいた青のりの土佐酢は、爽やかな磯の香りとキリッとした酸味が心地よく、お口直しにぴったり。こういう小さな一皿が丁寧に作られていると、お店の真心が伝わってきます。
お料理ひとつひとつが丁寧で、どれも過不足のない味付け。日本酒も珍しい銘柄が揃っていて、大将にお任せでお願いした一杯が、料理の美味しさをさらに引き立ててくれました。
「鬼樽」は、季節を感じながら、静かに料理と向き合いたいときに訪れたくなる一軒。目立たず、気取らず、けれど確かに心に残る和食のお店でした。
- 湯島駅
- 日本料理
根津の半地下にある温もり「酒菜 ひより」でいただく、心ほぐれる和の味
落ち着いた夜にふらりと訪れた「酒菜 ひより」。半地下に降りると、静かでやさしい灯りの店内が広がり、カウンター席に通されると、ちょっとした非日常が始まります。この日は、日替わりのメニューからいくつかを選んでじっくり味わいました。
まずはお刺身の盛り合わせ。赤身はほどよいねっとり感があり、舌の上でゆっくりと溶けるよう。白身はぷりっとした歯ごたえに爽やかな甘みがあって、どちらも鮮度が良く、醤油をほんの少しだけ添えるとさらに旨味が引き立ちました。
続いては、具だくさんの茶碗蒸し。ふたを開けるとふわりと湯気が立ちのぼり、なめらかな卵の中から、ぷりっとした海老やほろほろの鶏肉、しめじの香りが口いっぱいに広がります。牡蠣も入っていて、出汁の深さと具材の旨味が渾然一体となり、ひと口ごとにほっとするようなやさしさがありました。
銀杏の塩炒りは、軽く香ばしく炒られていて、噛むとふわっとほろ苦さと甘みが同時に広がります。お酒と一緒に楽しむには最高の一皿で、静かに過ごす夜にぴったりの落ち着いた味わいでした。
定番の「いぶりがっことクリームチーズ」もいただきました。カリッとしたいぶりがっこの歯ごたえと、まろやかでコクのあるチーズが絶妙なバランスで、一口で香り、食感、旨味のコントラストが楽しめます。これだけでお酒が進んでしまう、ちょっとした贅沢なつまみ。
メインは岩中豚のソテー。外側はカリッと香ばしく、中はふっくらジューシー。脂は軽くて甘みがあり、シンプルな味付けながら豚肉そのものの美味しさがしっかりと感じられます。ソースもあっさりとしていて、重たさを感じさせず最後まで美味しくいただけました。
どのお料理も、手間と気遣いが丁寧に込められていて、食べていて自然と心がやわらかくなるような、そんな味。「酒菜 ひより」は、決して大げさではないけれど、しみじみとした“美味しさ”が静かに広がるお店。ひとりでも気兼ねなく楽しめて、誰かと訪れれば心が近づく。そんな素敵な場所でした。
- 根津駅
- 日本料理
小ぢんまりと温かい空間で「がらつ八」の和の滋味をじっくり味わう夜
千石の静かな通りに佇む「がらつ八」で、しっぽり和食の夜ごはんをいただきました。店内はカウンターが中心の落ち着いた空間で、ご夫婦らしきおふたりが穏やかに切り盛りされていました。
最初に出てきたのは、ふきのお浸しと筍の木の芽和え。ふきは出汁の風味がじんわり染みていて、ほろ苦さの中に春らしい爽やかさを感じました。筍はシャキッとした歯ざわりで、木の芽の香りがふわっと鼻に抜けて、思わず箸が止まらなくなります。
お刺身の盛り合わせは、マグロの赤身、鯛、そしてホタテ。赤身は旨味がしっかり濃く、しっとり舌に馴染むようなやさしい口当たり。鯛は程よい弾力と甘さ、ホタテはとろけるように甘く、どれも鮮度の良さを感じさせてくれました。
焼き魚には、鮭の塩焼きを。皮はパリッと香ばしく、身はふっくら。脂がじゅわっと広がって、レモンをひと絞りすると、より一層さっぱりとした味わいに。とても丁寧に焼かれていて、思わず目を閉じて味わいたくなるような美味しさでした。
煮物は、大根と里芋の炊き合わせ。大根は芯まで出汁がしっかり染み込んでいて、噛むとじゅわっと広がるやさしい甘さ。里芋はねっとりとした食感で、これまた出汁の旨みがしっかり感じられて、体の奥から温まるようでした。
最後に天ぷら盛り合わせ。海老はぷりぷり、かぼちゃやししとうは甘みが引き立つ揚げ加減で、衣は軽やかで油っぽさをまったく感じません。天つゆもあっさりとしていて、素材の味を邪魔しない名脇役。
全体を通して、派手さはないけれど、ひとつひとつの料理に手間とやさしさが感じられる素敵な和食屋さん。肩ひじ張らず、心からほっとできる夜ごはんになりました。静かに、ゆっくり、丁寧に味わいたい。そんな気持ちになる一軒です。
- 本駒込駅
- 日本料理
とろける国産牛に癒される「木曽路」のしゃぶしゃぶと和会席の夜
この日は、文京区の「木曽路」でしゃぶしゃぶと和会席のコースを堪能してきました。ゆったりとした個室に通され、上品な雰囲気の中で始まる和の時間。お箸を手にした瞬間から、期待が自然と高まります。
まず運ばれてきたのは、前菜の五種盛り。筍の木の芽和えは春の香りがふんわりと立ち、ほろ苦さが心地よく、手まり寿司はふんわりと酢飯がほどけて、優しい甘みが舌に残ります。ひとつひとつに季節を感じられる、小さな喜びが詰まったひと皿でした。
次に登場したお造り三種は、どれも見た目から艶やかで、鮮度の良さが伝わってきます。鯛の白身はキリッとした歯ごたえと甘み、マグロはねっとりとした舌ざわりで赤身でも旨味がしっかりと感じられました。醤油をちょんとつけるだけで、素材の味がふわっと広がっていきます。
メインのしゃぶしゃぶは、霜降りの国産牛。薄切りのお肉をさっと湯にくぐらせると、ほんのりピンクに染まり、口に運んだ瞬間にとろけるような食感。旨味と脂の甘みがじんわり広がり、昆布だしの優しさと相まって、思わずため息が出る美味しさでした。
お鍋には野菜とつくねも一緒に。白菜はシャキシャキ感が残っていて、春菊の爽やかな苦みと共に、お鍋の出汁に奥行きを加えてくれます。つくねは肉感しっかりで、噛むほどにじゅわっと肉汁が溢れ、出汁に溶け出すことで鍋全体がさらにまろやかに。
そして、締めは鍋の旨味を吸ったうどん。つゆがしっかり染み込んでいて、ほどよいコシと柔らかさが一体になり、最後まで丁寧に味を楽しめました。
「木曽路」の料理は、どれもバランスがよく、素材の持ち味を大切にした味付け。しゃぶしゃぶはもちろん、懐石の品々もすべてが安心して身をゆだねられるおいしさ。ゆったりと語らいながら過ごす時間にぴったりの、落ち着いた和の晩ごはんでした。
- 根津駅
- 日本料理
季節を纏う静謐な和「一二三庵」で出会った、ひと皿ごとの物語
千駄木にある「一二三庵」は、築100年の静かな一軒家。扉を開けた瞬間から非日常の空気に包まれ、和室に通されると、まるで旅館の一室にいるような感覚になります。今回は、旬の食材を贅沢に使った懐石コースをいただきました。
最初に登場したのは「無花果と鶏ささ身の胡麻酢がけ」。果肉がとろりと甘く、鶏のささみはしっとり柔らか。まろやかな胡麻酢がふたつをやさしく結びつけていて、ひとくちで夏の余韻に包まれるような心地よさでした。
続いての「稚鮎の南蛮漬け」は、ふんわりと揚がった鮎が酸味を帯びた出汁に軽く浸されていて、噛むと身の甘みがじんわりと広がります。きゅうりのシャキッとした歯ごたえも涼感を添えてくれて、なんとも爽やかな一品。
「鱧の玉子豆腐」は、口に運ぶとまず玉子豆腐のとろける食感。その後に鱧の旨味がふわっと広がり、控えめな出汁と共に体に染み込むよう。余韻まで美味しいひと皿です。
椀ものは「鱧真薯と賀茂茄子」。淡く澄んだ出汁の中に、ほっくり揚げられた真薯ととろける茄子が泳ぎ、蓴菜のつるりとした舌触りがアクセントに。ひとくちごとに静けさが深まるようでした。
焼き物には「のどぐろの香味焼き」。箸を入れただけでふんわり崩れる白身は、脂がのっていてとてもジューシー。表面はこんがり香ばしく、塩加減と香味のバランスが絶妙で、思わず唸ってしまうほど。
最後の食事は「穴子と新ごぼうのご飯」。炊き込みご飯の香りだけでも幸せな気持ちになれそうで、食べると穴子の甘みとごぼうの風味がふわっと合わさり、優しく包まれるような味わい。添えられた炊き合わせの車海老や野菜も、しっとり出汁が染みていて、ひと口ごとに満たされていきます。
水菓子は「大葉のシャーベット」と「枇杷の蜜煮」。大葉のシャーベットは想像以上にさっぱりと爽やかで、最後に残る香りが夏の風のよう。枇杷は柔らかく、とろんとした自然な甘みが心地よく余韻を締めくくってくれました。
「一二三庵」は、料理ひと皿ひと皿が季節の詩のようで、丁寧に紡がれた時間そのもの。特別な日にも、何気ないご褒美にもふさわしい、静かに記憶に残る美しい和食の世界でした。
- 千駄木駅
- 日本料理
静かな夜の小料理屋「千原」で、やさしい味わいに包まれるひととき
根津の路地裏にひっそりと佇む「千原」で、しっとりとした夜の和食をいただきました。店内はカウンターと小上がりの座敷のみで、落ち着いた照明のもと、時間がゆったりと流れていきます。ご夫婦で営む小さなお店で、どこか実家のような安心感があります。
まず最初にいただいたのは、お刺身の盛り合わせ。赤身はほどよく熟成されていて、ねっとりとした舌ざわりと共に甘みがじわっと広がります。白身は透き通るような瑞々しさがあり、噛むほどにその優しさが染み渡ってくるようでした。シンプルながら素材の良さをじっくり味わえるひと皿。
次に登場した焼き魚は、脂ののった鯖の塩焼き。皮は香ばしくパリッと焼き上げられていて、身はふわっとやわらかく、じんわりとした塩加減がご飯なしでもずっと食べていたくなる味。レモンを少し絞ると、爽やかさが加わってまたひと口、またひと口と止まらなくなりました。
厚揚げの煮物もとても印象的でした。外側は少し焼き目がついていて香ばしく、中はふんわり。出汁がしっかり染みていて、ひと口食べるたびにじわっと旨味があふれ出す。思わず「ほっ」とため息がもれるような、やさしさの詰まった味です。
締めにいただいた天ぷらは、季節の野菜と海老。衣は驚くほど軽く、さくっとした歯ごたえと共に、野菜の甘みや海老の香りがふわっと口の中に広がります。天つゆも控えめで、素材の良さが引き立つ仕上がり。
どの料理も奇をてらわず、素材を大切に、手間を惜しまず丁寧に仕上げられているのが伝わってきます。「千原」は、何気ない夜にこそふらりと訪れたくなる、心に寄り添うような和食のお店でした。
- 根津駅
- 日本料理
個室でゆったり、静かな夜の会席「板倉茶屋 要」で味わう季節の美しさ
湯島にある「板倉茶屋 要」で、大切な友人としっとり会席をいただきました。完全個室の落ち着いた空間で、木のぬくもりに包まれながら、季節の味わいにじっくり向き合うひととき。
先付けとして出てきた小鉢は、ふきと菜の花のおひたし。ほろ苦さの中に春の香りがふんわりと広がり、出汁の旨みが素材をそっと引き立てていました。口に運ぶたびに、季節がひとくちに凝縮されているような優しい味わい。
続いてのお造り盛り合わせは、鯛、中トロ、白身魚の三種。中トロは脂がとろけるのにしつこくなく、鯛はこりっとした歯ごたえと甘みが広がり、どの一切れもとても上品。山葵をほんの少し添えると、その香りが清涼感を添えてくれました。
焼き物は、伊勢海老の具足煮。殻の中までしっかり旨味が染み込んでいて、身をほぐすたびに、海の香りと濃厚な甘みがじんわりと広がります。出汁の加減も絶妙で、重たくならずにすっと馴染むような仕上がり。
煮物は、冬の炊き合わせ。大根、里芋、人参などがしっとりと煮込まれていて、噛むごとに出汁があふれるよう。とくに大根の柔らかさと味の染み具合に、思わず目を閉じて味わいたくなるほど。
揚げ物には、筍と海老の天ぷら。衣は軽くてさくっとしていて、素材の甘みと香りがぐんと引き立ちます。塩でいただくと、より素材の味が引き立って、ぴったりの味のバランス。
最後にいただいた柚子シャーベットは、清涼感とほどよい酸味で、口の中をさっぱりと整えてくれる締めにぴったりな一品でした。
全体を通して、どのお料理にも季節感と丁寧さが溢れていて、ひと皿ごとに「静かに味わう」ことの贅沢さを実感できました。何か特別な日に、静かに語らいながら食事を楽しみたい。そんな時に、また訪れたいと思えるお店でした。
- 上野広小路駅
- 日本料理