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懐かしいレコードが必ず見つかる。と思います。

4.50

投稿日: 2013/08/19

サム・ペキンパー監督のゲッタウェイという映画をご存じでしょうか。スティーブ・マックィーンがアリ・マッグロウと主演した銀行強盗の話なんですが。
この映画、当初音楽はジェリー・フィールディングという音楽家が担当していて、オリジナルスコアも完成していました。
ところが主役のマックィーンが旧知のクインシー・ジョーンズを音楽担当に差し替えてしまいました。
ゲッタウェイにおけるクインシー・ジョーンズの音楽は素晴らしく、映画の制作から４０年が経過した今でも根強い人気があるようです。とくに映画の全編に流れるトゥーツ・シールマンスによる哀愁漂うハーモニカソロは秀逸で、私も大好きなんですが、残念ながらＣＤは発売されていません。
ゲッタウェイのサントラレコードは１９７３年に映画の公開と同時に発売されたシングル盤だけにとどまり、アルバムが発売されることはなかったのです。
理由は、バイオレンスアクション映画のサントラレコードは売れないという定説が強かったからだと言われています。
ジェリー・フィールディングは、サム・ペキンパー映画の常連だったので、ペキンパーはマックィーンが無断で音楽担当者を交代させたことに憤慨し、それが確執を生んだようで、クインシー・ジョーンズは、この映画以降ほとんど映画音楽には関与しなくなりました。
そうした経緯があるからか、クインシー・ジョーンズのゲッタウェイサントラは封印されてしまい、逆に録音テープが残っていたジェリー・フィールディングの音楽の方がゲッタウェイのサントラと銘打ってＣＤ化されています。

さて、非常に前置きが長くなってしまいました。
要するに１９７３年に発売されたシングルレコードを探していたのです。
しかも「ゲッタウェイ」という、ややマイナーな映画音楽です。
ネットオークションで数年かけて検索していますが、一度だけ出品物に巡り合ったものの、商品の状態は中の下でありながら入札者が殺到し、３千円で落札されていました。
もちろん、ついていけずに途中で脱落しましたが。
それ以後、出品物に巡り合うことはなく、このレコードのことも半ば諦めかけていました。
さらに、我が家のレコードプレーヤーを嫁が廃品に出してしまい、たとえレコードを入手したとしても聴くことが出来なくなったこともあり、購買欲も薄れかけていたのです。
そんなある日、ネット通販でゲッタウェイのシングルレコードが売りに出ているのを発見しました。
オークションではなく、中古レコードショップがネットに広告を出しているもので、価格は何と６８０円。
おお、何と良心的な値段ではないか！
さっそく購入しようとしましたが、ネット購入するためには会員になる必要があり、ちょっと面倒だな〜と思っていると、そのお店の所在地は福岡市中央区港ではないですか。私の職場から頑張れば歩いて行ける距離。
これは面倒な会員加入手続きなんかやってるよりも店を直接訪ねた方が早いと思い、開店時間の午後５時に合わせて出掛けてみることにしました。

古いビルでした。昭和５０年ころ、いやもしかすると４０年代に建造されたと思われる狭い間口のビルです。
建物の入り口はいきなり階段で、その登り口の横にテナントのポストが並んでおり、そのうちの一つに「ＰＡＲＫＳ」のカードが貼り付けられています。
どうやら３階のようなので、強烈な西陽で熱気のこもるその階段を３階まで上がってみます。
昭和時代のギャング映画でピストルの闇取引をする場面を思い出しながら３階にたどり着くと、まだ開店していませんでした。
何ともチープな木製のドアは昭和の名残り。ベタベタと貼り付けられたチラシを眺めながら店主が来るのを待ちます。
学生のころ、夜食をタダで食べさせてくれるスナックの前で店が終わるのを待っていたころを思い出します。
かっきり３０分待たされて、店主が登場しました。
見たところ３０歳くらいの若い店主は、いかにもオタっキーなオーラを醸し出しており、私の目的物を聞くと、ガサガサと収納箱の中をかき回して、１枚のレコードを差し出してくれました。
ゲッタウェイのサントラシングル。間違いなくクインシー・ジョーンズの名前が入っています。
商品が間違いないことを確認すると、ジャケットからレコード盤を抜き出して傷の有無を一緒に確認し、「いちお、ほぼ新品と同じと思って良いと思いますけど」とやや自信のなさそうな声で言うと、今日はサービス期間中なので３割引きで良いとのことで４００円台で買うことが出来ました。
開店と同時に、似たような風貌の男性が一人、二人と入店してきます。
みなさん、懐かしの絶版レコードを探しに来ているのか、入念に展示棚や箱の中をチェックしています。
夢に見た逸品に出会えたときの喜びは形容しがたし。そんな夢の詰まった懐かしのレコード店です。